研究課題/領域番号 |
20KK0082
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小田 啓邦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (90356725)
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研究分担者 |
穴井 千里 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 客員助教 (00845779)
兼子 尚知 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50356804)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 宮古島 / 磁鉄鉱 / 赤鉄鉱 / 走磁性バクテリア / 海水準変動 / 古地磁気強度 / 地磁気逆転境界 / 礁性石灰岩 |
研究実績の概要 |
Anai et al. (2017, 2018)で分析に用いた礁性石灰岩試料からパイロット試料を選び出し、古地磁気・岩石磁気分析を行った。今年度は、特に走査型SQUID顕微鏡を用いたサブミリメータ分析を行い、以下のことが明らかになりつつある。同じレベルでの交流消磁を複数回行い、磁気マッピングを行ったが、ダイポール磁気異常を示す磁性鉱物の磁化方位が交流消磁を行うたびに異なる方位を示すことが確認された。これは礁性石灰岩試料の空隙に取り込まれた多磁区磁性鉱物粒子(磁鉄鉱)の影響を示すと想定される。10mTと20mTにおいて、X軸方向交流消磁、Y軸方向交流消磁、Z軸方向交流消磁、タンブリング交流消磁を比較したが、タンブリング交流消磁の結果が最も不安定な消磁結果を示すように見える。さらに、蛍光X線マッピング装置を用いて、鉄酸化物が空隙に付着していること、還元化学消磁によりこれらが除去されることが確認された。しかしながら、粒子サイズの大きな多磁区磁性鉱物粒子は還元化学消磁の後も残っていることが確認された。さらに、2021年10月に宮古島で古地磁気定方位試料・微化石試料採取を、山田(2002)の分類によるUnit1~4の19層準で行った。このうちUnit4は77万年前のブルン-松山地磁気逆転境界を含むと想定される。試料採取した岩相は、石灰藻球石灰岩、サンゴ石灰岩、生砕性石灰岩などである。研究協力者との連携によりこれら層準におけるナンノ化石の検出を試みたが、1層準を除いてナンノ化石は検出できず、微化石年代推定はできなかった。これら試料の磁化率は1x10^-10~1x10^-6m^3/kg、自然残留磁化は1x10^-7~3x10^-5 Am^2/kgであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により宮古島での現地調査・試料採取の開始が遅れ、2021年10月に行うこととなった。また、液体ヘリウム調達の滞りにより、液体ヘリウムを用いた走査型SQUID顕微鏡による分析が遅れている。磁気ヒステリシス分析に用いる振動試料式磁力計の修理が米国メーカーの都合などにより長引いており、このため試料の岩石磁気分析が遅れている。さらに、2020年度に続き、2021年度も米国ロチェスター大学を訪問できなかった。これらにより、新たな試料を用いた分析、米国での実験計画などが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に宮古島で採取した試料の古地磁気・岩石磁気分析を優先的に進める。また、新型コロナウィルスの感染状況を見極め、宮古島での2回目の地質調査と古地磁気・岩石磁気試料採取を2022年度の適切な時期に行う。今年度は、ストロンチウム同位体分析を進めることで年代推定の指標とすることを新たな試みとする。2021年度までの走査型SQUID磁気顕微鏡による成果を論文としてまとめつつ、今後の古地磁気・岩石磁気分析の進め方の戦略とする。2022年度中に米国ロチェスター大学を訪問して加熱による古地磁気強度推定実験を進めることができるよう、米国共同研究者との連携を密にとり、効率的な実験が可能となるよう戦略的に実験計画を立てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により2021年度は米国ロチェスター大学を訪問できなかった。また、液体ヘリウム調達の滞りにより、液体ヘリウムを用いた走査型SQUID顕微鏡による分析が遅れている。これらにより、次年度使用額が発生した。2022年度は、これら2021年度に計画した米国出張による実験と走査型SQUID顕微鏡による実験などを優先的に実行する。
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