研究課題/領域番号 |
20KK0088
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山下 兼一 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (00346115)
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研究分担者 |
高橋 駿 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 准教授 (60731768)
柳 久雄 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00220179)
水野 斎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (60734837)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2023-03-31
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キーワード | 半導体微小共振器 / ポラリトン / 有機半導体 / ペロブスカイト |
研究実績の概要 |
本研究は、次世代の革新的量子デバイス技術の構築に向けて、半導体中で形成される光-物質混成状態の基礎光電子物性を詳細に理解し、それらを室温にて自在に制御するための基盤技術を開発することを目的とする。特異な電子物性を持つ半導体材料を高品質な光微小共振器内に閉じ込め、その電子励起状態を光子と強く相互作用させる。生成された混成励起状態が示す半光子/半物質物性の時間領域および実空間領域でのダイナミクスを調べ上げ、室温でのボーズ・アインシュタイン凝縮に基づく新奇光電子機能の発現/制御手法を開発する。これまでにも強い協力関係がある海外連携機関(英国ケンブリッジ 大学)を訪問し、世界最先端の評価実験を実施する。2名の若手研究者を含む研究組織により、本研究プロジェクトを国際的なネットワークの中で中核的に実施する。 今年度の成果として、有機半導体BP1T-CN結晶を活性層とした微小共振器における閾値以下での励起状態緩和ダイナミクスに関する論文をパブリッシュした。凝縮が引き起こされる最低エネルギー状態への緩和過程としては、光子状態を介した輻射緩和と励起子状態を介した非輻射緩和が存在し、それらの分率はポラリトン状態の光子/励起子性に直接関係していることを明らかにした。 また、全無機鉛ハライドペロブスカイトを活性層に用いた微小共振器においては、BCS状態が関与したポラリトンの室温でのエネルギー凝縮が起こることを実験的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画としてあげていた事項である「結晶成長」に関しては、気相成長法による全無機鉛ハライドペロブスカイト結晶の作製手法を確立した。また、「共振器デバイス作製」については、今年度当初に計画していたスパッタリング装置(別予算で購入)の立ち上げも順調に進み、ペロブスカイト結晶を活性層とした高品質な微小共振器サンプルの作製が可能となった。実際に測定されるポラリトン凝縮も低閾値で確認することができている。また、ポラリトンの分散特性および凝縮特性を光学的に評価する手段として新たにフーリエイメージング分光システムを立ち上げ、大幅に実験スループットが上がった。 海外連携機関での最終目標としている「超高速&実空間ダイナミクス」評価の実現に向けては、コロナ禍の終息気配はあるが欧州での社会情勢の悪化のため、依然として不透明な状況にはある。しかしながら、年度末あたりでの渡英に向けて準備を進めており、今夏には短期訪問により先方との協議を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続きペロブスカイトの結晶成長と薄膜化、および高品質な微小共振器サンプル作製に主眼をおいて国内での準備を進める。それとともに、短期間の渡英により先方との具体的な実験内容の協議を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度においては当初予定していたハイパースペクトルカメラが、高分解能な顕微分光システムの構築により購入の必要はなくなった。一方、ペロブスカイト結晶成長の最適化にかかる試薬・消耗品類の出費が当初の予定より大幅に増えている。この傾向は次年度も継続する見込みであるため、次年度使用額が増加している。
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