研究課題/領域番号 |
20KK0089
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
村上 朝之 成蹊大学, 理工学部, 教授 (20323818)
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研究分担者 |
井内 勝哉 成蹊大学, 理工学部, 助教 (40553847)
西尾 悠 成蹊大学, 理工学部, 助教 (70712743)
川口 悟 成蹊大学, 理工学部, 助教 (70834852)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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キーワード | プラズマ医療 / 低温大気圧プラズマモデリング / 生体化学モデリング |
研究実績の概要 |
抗微生物薬剤に対する耐性を身につけた細菌への対策が世界的な急務となっている現在、従来型抗生物質に代わる手段として低温大気圧プラズマ放電現象が注目されている。本研究は、低温大気圧プラズマの細菌不活化(死滅・感染性を失わせる)効果の作用機序を解明することを目的とた国際共同研究を行う。特に、低温大気圧プラズマの様々な作用変数を制御することで細菌群に対して非特異的な効果を与えつつ、細菌細胞内のDNA・蛋白質の分子生物学的変化および細菌細胞群の細胞生物学的変化(非耐性菌あるいは耐性菌の死滅や出現の挙動)についての定量的な知見を得る。ここでは、特にバイオフィルム状細菌群不活性化実験および細胞群挙動シミュレーションを相補的に用いた研究推進を行う。 令和2年度は、プラズマが生成する活性窒素種の作用に焦点を絞り、(1) 窒素ベース低温大気圧プラズマのコアプラズマ領域・アフターグロー領域および大気飽和水領域を包括する統合型数理モデリングを構築し数値シミュレーションを行った。その結果、窒素ベース低温大気圧プラズマを大気飽和水に照射することによって、多様な液相活性酸素窒素種を選択的に誘起できること、すなわち液相を纏う生体標的に対して制御された化学種投与が可能であることを定量的に示した。さらに、(2) 数値モデルに対応する低温大気圧窒素プラズマ実験装置を用い、HEK293T細胞(ヒト胎児腎細胞)を対象とした細胞死誘導実験の基礎的検討を行った。また、(3) グラフ理論に基づいたネットワーク解析により、低温大気圧プラズマと生体化学ネットワークシステムをブリッジする知見を得た。これらの成果に基づき、原著学術論文 1編、著作 1編、国際会議招待講演 1件、国際会議講演 1件、国内会議招待講演 2件、国内会議講演 4件の業績を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画以上に数理モデリング研究が進展しており、原著学術論文出版ならびに国内外あわせ3件の招待講演を行った。また実験研究(国内)も順調に進展している。一方、2020年初頭からつづく新型コロナウィルス感染症に起因したイレギュラーな国際情勢により、海外研究機関に赴き行う予定であった実験研究を断念せざるを得なかった。 今後、海外渡航が可能となり次第、国際的な共同研究体制を再確立しつつ、さらなる原著学術論文の投稿ならびに国際会議招待講演を行うなどの効果的な成果発表を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、数理モデリングの面において海外研究機関とのバーチャルな共同研究体制を維持しつつ、実験研究は国内で行うことを基本方針とする。ここでは、活性窒素種が細胞死を誘導する機構の解明を目的とする。すなわち、NO, NO2-, ONOO- の細胞内生成・除去機構およびミトコンドリアからサイトプラズマへ放出されるシトクロムCを介したシステインプロテアーゼ(カスパーゼ 3, 7, 8, 9 系列)活性化挙動に注目する。さらに、プラズマ由来活性窒素種がどのようにして種々の細胞死(アポトーシス/ネクローシス)を誘導するのか、その細胞運命を左右するプロセスを明らかにするための実験研究および数値シミュレーション研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:2020年初頭からつづく新型コロナウィルス感染症に起因したイレギュラーな国際社会情勢により海外渡航が完全に制限されたことにより、国際共同研究の遂行が容易ではなかったため。 使用計画:研究方針を大幅に変更する予定はなく、理論モデルの構築・数値シミュレーションを主体とした国際共同研究および国内における実験研究を軸に計画を遂行する。国際研究協力および国際会議などの成果公表の方法・内容・予算執行時期等については諸事情を鑑みつつ柔軟に考える。
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