研究課題/領域番号 |
20KK0091
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
八嶋 厚 岐阜大学, 工学部, 教授 (90144394)
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研究分担者 |
藤原 覚太 東海大学, 工学部, 助教 (40824925)
原 隆史 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (90544990)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2023-03-31
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キーワード | グラウンドアンカー / 地すべり / 鋼管杭 / 現場計測 / 遠心載荷試験 / 数値解析 / 破壊確率 / 振動法 |
研究実績の概要 |
本研究では、地すべり抑止のために構築されたアンカーおよび鋼管杭といった代表的な抑止工の機能を評価し、斜面の長期安定性を力学的に評価する手法を提案する。コロナ禍の制約のため令和3年度に予定していた三峡ダム地すべり地における研究実施は、不可能となった。しかしながら、中国同済大学グループおよび国内共同研究者との間で綿密な意見交換を高頻度で行い、計画した研究を実施した。その結果、以下のような成果を得た。 1) 地盤の不均一性を考慮したアンカー付き地すべり抑止杭の効果について、予備的な遠心載荷実験と数値解析を実施した。その結果、ばらつきを有する地盤において、アンカー付き地すべり抑止杭の信頼性設計に基づく最適設計のありかたをまとめた。 2) 岐阜県内の多くのアンカー法面に対して、振動法を用いた残存緊張力推定を実施した。計測システムの軽量化、解析システムのカスタマイズ化を実施し、ほぼ実用化に供する計測・解析手法を確立した。なお、本研究で提案した「振動法によるアンカー残存緊張力推定方法」は、その有効性と簡便性に基づき、令和3年度地盤工学会中部支部技術賞を受賞した。 3) 令和4年度に実施予定の遠心載荷実験(中国・同済大学に於いて実施予定)の予備実験として、斜面の安定化に寄与するアンカー補助部材の効果について模型実験を実施した。その結果、提案する補助部材によりアンカーの負担軽減が図れることがわかった。 4) NEXCO各社のアンカー残存緊張力データを数多く収集した。そのデータを解析することにより、不安定化に向かうアンカー法面の判定方法を破壊確率を用いて推定する方法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、地すべり抑止のために構築されたアンカーおよび鋼管杭といった構造体の機能を評価し、斜面の長期安定性を力学的に評価する手法を提案する。コロナ禍の制約のため令和3年度に予定していた三峡ダム地すべり地における研究実施は、不可能となった。このため、日本側研究者および中国側研究者が、綿密な意見交換に基づいて、実験、計測、解析を行った。その結果を、学会発表するとともに、論文投稿などを行った。 さらに、当該分野に精通する数多くの国内外研究者の参加を得て、斜面防災に関する国際会議「3rd International Symposium on Risk Assessment and Sustainable Stability Design of Slopes,19-20 March, 2022, Sendai」を企画・開催した。本研究代表者の八嶋が会議議長を務めた。コロナ禍のため、対面での開催は断念したが、7か国100名以上の研究者が、オンライン環境のもと、本課題研究のテーマについて議論した。すべての発表内容はアブストラクト集として公開するとともに、Soils and Foudations(地盤工学会の基幹論文集)特別号への投稿を奨励した。なお、この国際会議は、ユネスコ、地盤工学会、日本地すべり学会等の後援のもとに実施した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度においては、令和3年度までの研究成果に基づき、以下の研究を行う。 1) アンカー付き地すべり抑止杭の、斜面安定効果を解明するために、中国同済大学において遠心載荷実験を継続する。実験結果を数値解析、特に2次元FEM解析とNewmark法のハイブリッド解析により再現するとともに、パラメトリック・スタディにより、杭とアンカーの各緒元が地すべり抑止効果に及ぼす影響を詳細に検討する。分担者の藤原・原および海外共同研究者の同済大学・黄教授が主に担当する。 2) 中国雲南省高速道路切土およびNEXCO中日本(株)管内のアンカー法面について、アンカー残存緊張力に注目した現場計測を実施する。三峡ダム地すべり地に数多く設置されたものと同様の地すべり対策工について、抑止効果を確認のために、アクセスしやすい箇所をピックアップした。そこでの計測により、研究成果の獲得を加速する。これにより、アンカー緊張力の簡易的非破壊試験法の確立を目指す。アンカー緊張力の計測は八嶋が担当する。 3) 「破壊確率を用いた斜面の長期的安全性評価手法」の確立を目指す。計測されたアンカー残存緊張力を用いて、円弧すべりの逆解析および地震時変形解析を行う。これにより、アンカー緊張力および杭の曲げ応力の時間的変化が、斜面の安全性にどのように影響するのかを検討する。解析は、分担者の藤原・原および海外共同研究者の同済大学・黄教授が主に担当する。 令和4年度においても、コロナ禍のため、中国における実験および計測について、日本側研究者による実施が困難な場合も想定される。その場合、遠心載荷試験は、同済大学・黄教授が担当する。しかしながら、実験結果の再現解析に関しては、分担者の藤原・原が黄教授と密接な関係を保ちながら実施する。国内斜面での現場計測については、研究協力者の斎藤とともに、研究代表者の八嶋が実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入が予定よりも少額でしたので、39円の残高が発生しました。次年度に繰り越して使用させていただきます。
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