研究課題/領域番号 |
20KK0093
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
日向 博文 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70272680)
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研究分担者 |
藤 良太郎 愛媛大学, 防災情報研究センター, 特定研究員 (00856883)
藤井 智史 琉球大学, 工学部, 教授 (30359004)
片岡 智哉 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (70553767)
奥村 与志弘 関西大学, 社会安全学部, 教授 (80514124)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 海洋レーダー / 津波検知 / 津波避難モデル |
研究実績の概要 |
本年度では,インドネシアバントゥール(BTL)局における平常時の観測データと.Kongko and Hidayat (2014)による地震津波の組み合わせによる仮想津波観測データを作成した.シナリオは2019年12月15日01:00から津波発生時刻を1時間ずつずらすことにより,背景ノイズの異なる740通り作成した.但し実際には平常時の観測データに欠測が含まれる138シナリオを除いた602シナリオを使用して分析を行った.この各シナリオについて,FHO法(Ogata et al., 2018)にそって計算を行い,津波検知確率を算出した.実験の結果,津波発生17分後までは全観測点で検知確率は10%を下回っていた.最大検知確率が始めて80%を超えるのは津波発生29分後であるが,この時点で既にBTL局に2.6m程の津波が到達している.津波がBTL局に到達しているのにも関わらず検知確率が上昇しない理由は,仮想津波流速の短周期成分に含まれるノイズ成分の寄与が大きい為である可能性が高く,また,岸沖方向の水深変化が大きいことも影響していると考えられる.そこで,これまで岸沖方向の二点の観測点間で相関を取っていたのに対し,ある代表点を決めその代表点とそれ以外全ての観測点間における相関を求め,その空間的な変動から津波の検知が可能かどうか検討した.201912160700シナリオについて,代表観測点をビーム09,レンジ03とした時の津波発生16, 19, 23, 26, 30, 34分後における相関係数の空間分布の変化について検討した結果,波峰が水深200mである領域及び水深400mである領域を通過後,相関係数が大きく変動し,その変動には空間的なパターンが存在していた.来年度は,機械学習等のテクニックを使用し,津波到来時の相関係数空間パターンの抽出を自動で行う方法を開発する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インドネシアジャワ島に設置したレーダーのSN比は,日本に設置した場合(Ogata et al., 2018)に比べて低い場合が多く,また,岸沖方向水深を比べると,インドネシアの方が急深な状況である.従って,当初予定した通り,日本で開発した津波検知方法では検知パフォーマンス(津波第1波の到達時刻何分間に検知できるかどうか)が日本に比較して低い結果となった.そこで,岸沖方向の津波到達に伴う流速変動だけでなく,レーダー観測範囲全体の流速変動状況を利用することで,津波到達のシグナルを相関係数の空間分布パターン変化として検知する方法について検証することとした.まだ,最終的なパフォーマンスについては定量化できていないが,この空間分布パターンの変化を機械学習等で自動検知することで,低SN比,あるいは急深な近いにも対応する方法を確立できるものと考えている.本研究の主要目的が,我が国とは異なる環境下での研究からよりロバストな津波検知方法を開発することであることから,津波検知については概ね当初期待した通りに研究が進展していると考えている. ジャワ島南岸の地域住民へのヒアリングとレーダー情報の避難モデルへの応用や現地でのノイズ計測については,今年度から海外渡航が支障なく行えるようになったため,やや遅れていると考えている.ただし,今年度,地域住民に対するヒアリングを実施し,また,住民との継続的な情報交換のスキームについてもガジャマダ大学やバンドン工科大学と構築することができた.
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今後の研究の推進方策 |
1.インドネシアにおける仮想津波観測実験から低SN比,あるいは急深な海底地形においても提供可能なよりロバストな津波検知方法を今年度の成果に基づいて開発する. 2.現地でのノイズ計測に基づいたノイズフィルターの開発を行う. 3.レーダーの津波検知情報をいかにジャワ島南岸部の地域住民の避難に応用するか,今年度のヒアリング調査の結果に基づいて避難モデルを開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響が緩和されインドネシア現地での調査ができるようになったのが秋以降であったため. コロナ禍による行動制限がほぼ撤廃されたことから,2023年度はこれまでの調査も含め実施していく予定である.
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