研究課題/領域番号 |
20KK0096
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高根 雄也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80711952)
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研究分担者 |
小野村 史穂 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 助教 (40822937)
仲吉 信人 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 准教授 (90706475)
中野 満寿男 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (40713954)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 都市気候 / 屋根面アルベドデータベース / クールルーフ / 気候変動適応 / ヒートアイランド |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度に引き続きアルベドデータベース開発と数値モデル開発・整備を実施した。 アルベドデータベース開発では、衛星データの超解像による屋根面アルベド推定アルゴリズムの改良、マルチスペクトルカメラを用いたヘリコプター空撮による東京都心部の屋根面アルベド測定、スペクトロメータを用いたデンバー都市部での屋根面反射スペクトルの実測、世界主要都市の建物幾何データの取得と解析を行った。超解像では、2020年度構築したアルゴリズムを改良し非商用衛星Sentinelによるアルベドデータ取得を可能とし、前年度よりも高精度化、高解像度化に繋げた。ヘリ空撮による屋根面アルベドと商用衛星worldview3による屋根面アルベド(前年度に精度確認済み)を比較すると、相関はあるがデータの分散が大きいことが確認された。デンバーでの実測でもworldview3との反射率に差が確認されており、アルベド値測定手法毎のバラツキがあることが明らかになった。不確実性の要因を明らかにすべく検討を進めている。 モデル開発・整備パートでは、2020年度に引き続き1)都市気候モデルによる計算結果の精度検証、および2)全球気候モデルとの結合のための統合陸域シミュレータ(ILS)への結合作業を行なった。1)では、都市気候モデルを世界各国(アジア、オセアニア、ヨーロッパ、北米)の都市へ適用し、モデルで計算される放射収支および熱フラックスを測定値と比較し、モデルによる再現精度が気候帯や都市の形態等の違いに依存していることやその特徴について把握した。2)では、都市気候モデルと統合陸域シミュレータ(ILS)との結合作業をスタートさせ、都市気候モデルの入力パラメータの読み込みや気象フォーシングの共有などを完了させた。また、全球気候モデルとILSとの結合作業を行なっている他の機関の研究者との合宿形式での意見交換および進捗状況の共有、共同作業を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アルベドデータベース開発パートでは、超解像によるアプローチでは建物輪郭データが不可欠であるが、世界主要都市では建物GISデータが整備され公開されており、主要都市での屋根面アルベドデータベース構築の見通しがたっている。建物GISデータが無い都市の取り扱い、屋根面アルベド精度検証用の真値の取り扱いが次の課題である。 モデル開発・整備パートでは、全球展開を見据えて都市気候モデルの計算精度を世界各国(アジア、オセアニア、ヨーロッパ、北米)の都市に適用できた。また、都市気候モデルを、既に全球気候モデルに結合済みのILSに移植することで、全球気候モデルとの結合という大きな技術的なハードルを超える目処が立った。アルベドデータベースを使用したクールルーフの導入効果に関する数値実験に先立ち、都市気候モデルを用いた感度実験に関する論文を投稿し、受理された。 以上より、計画以上の進展があったと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
アルベドデータベース開発パートでは、2022年度に東京都心部で屋根面アルベド測定の集中観測を行う。商用衛星データWorldView3による算出値、撮影高度・波長の異なるマルチスペクトルカメラによる測定値、4成分放射計、スペクトロメータを用いた測定値、と考えられる全てのアルベド測定・推定手法を比較し、手法毎の不確実性の幅を明らかにする。また、世界主要都市の建物GISデータを分析し、メソ気象用幾何パラメータ、屋根面アルベドデータを整備する。 モデル開発・整備パートでは、都市気候モデルの計算精度の特徴を引き続き把握するととともに、都市気候モデルのILSへの移植を完了させ、移植後のILSでのテスト計算を実施する。その後、ILSのカップラーを通じて、都市気象モデルを全球気候モデルと結合させる。結合後は、結合モデルによる全球気候のテスト計算を実施する。テスト計算後は、過去・現在・未来の全球気候計算を行うとともに、開発されたアルベドデータベースを導入し、クールルーフの都市気候へのインパクトを全球的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ影響により海外渡航ができず、国際学会への参加、現地観測ができなかったため繰越を行った。2022年度は海外渡航、海外協力者の招聘が可能となるため、8で述べた現地観測のための費用に当てる。
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