研究課題
無人高機能観測装置 (USV: Unmanned Surface Vehicle)の一つである、WG(ウェーブグライダー)に関するハワイ大学および米国海洋大気庁との共同研究成果として、熱帯西部太平洋暖水プール域における大気海洋相互作用の特徴について熱収支の観点から、熱帯太平洋ウォームプールの一時的な温暖化は混合層温度の太陽放射加熱に対する感度の上昇と関連していること、大気慣性重力波による風の強まりは上昇潜熱フラックスを高め、大雨の日周変動を引き起こすこと、対流圏下層の成層と風速の変化により、大気と海洋の変動の結合強度が変わることなどを明らかにした (Nagano et al., 2022 JGR)。WG観測に関する国内研究へのフィードバックとして、独自に防水加工した湿度計および国内ベンチャー企業が開発したCTDセンサーをウェーブグライダーに搭載し、世界に先駆けて洋上観測として湿度および海水温・塩分の観測に成功した。これにより、暖水塊における熱収支フラックスを計算することに成功した (Nagano et al., 2022a)。一方で、USV観測でカバーできる時空間範囲は限られており、他の観測データの利活用も必要となる。東北マリンプロジェクトの一環として、海水化学成分をキャンペーン式で継続的に観測した結果、一時期において溶存酸素濃度の低下がみられた。そこで、海底ケーブル式地震観測網(S-net)を用いた加速度計との相関をとると、最大加速度が大きい地震の発生後に限って低下することが立証された (Wakita et al., 2022)。このことは、生態系の影響変化を通じて海水密度が変わり得る可能性を示唆するものである。また、スロー地震の伝播速度を摩擦特性との関係式として記述した (Ariyoshi 2022)。これにより、AUVで観測された地殻変動を補完することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
国際共著論文については出版1編、査読中1編となっており、テキサス大学オースティン校との共同研究も具体化して進んでいることなどから、概ね順調であると評価した。
米国機関との共同研究をさらに加速させるべく、コロナ感染リスクが終息しつつある来年度には訪米を再開し、テキサス大学オースティン校に加え、米国地質調査所、米国海洋大気庁などとの米国共同研究を加速させる。また、2023年3月に発生した浅部スロースリップイベントにについての解析も進める予定である。
コロナ感染リスク回避を考慮して、訪米を次年度に延期したため。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 127 ページ: -
10.1029/2021JB023800
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Sensors
巻: 22 ページ: -
10.3390/s22249695
Journal of Geophysical Research: Oceans
10.1029/2022JC019032