研究課題/領域番号 |
20KK0101
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
三島 伸雄 佐賀大学, 理工学部, 教授 (60281200)
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研究分担者 |
渕上 貴由樹 佐賀大学, 理工学部, 助教 (00530172)
中山 功一 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (50418498)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 世界遺産 / 歴史的環境保全 / 危機管理計画 / 防災 / 人的災害要因 |
研究実績の概要 |
本研究は、2015年に世界遺産暫定リストに掲載されたタイ国チェンマイ世界遺産候補地区(以下、候補地区)の危機管理計画立案に寄与するために、チェンマイ大学社会科学研究所Social Research Institute(以下、SR研究所)と共同し、特に旧市街地およびその周辺地区(以下、歴史地区)における人的災害要因を考慮した同時多発的道路閉塞時に対する危機管理分析基盤を構築することを目的としている。そして、2020および2021年度においては、現地に赴いて人的災害要因に関わるデータの収集およびGIS等を用いたデータベースを構築することにしていた。 しかしながら、コロナ禍で所属機関の方針により、現地に赴くことができなかった。そこで、現地の共同研究者に連絡をとり、①協力者によるデータ収集およびそのデータのGISへの組み込みと分析、②チェンマイの世界遺産に向けた国際共同研究フォーラムの実施を行なった。 ①は、2つの調査研究を行い、建築学会等に投稿・発表した。すなわち、歴史地区における予期せぬ内水氾濫時を考慮した外国人宿泊客の避難に関する研究、歴史的市街地のフードショップ(以下、FS)が集積する市場における火災時の避難に関する研究である。それらの結果、歴史地区中心部の比較的高い部分に位置する公共施設への避難が有効であること、コロナ禍で来客数が少なかった時でもピーク時には外部の路上FSによって避難が滞ることが明らかになった。今後、現地に行けなかったことにより調査できなかった部分のデータ収集と分析などを行う予定である。 ②は、SR研究所の共同研究者と協力し、国際共同フォーラム「"NOW &NEXT"チェンマイ世界遺産選定に向けて」を実施した。これにより、オンラインではあったが、チェンマイの世界遺産選定に向けた課題や研究成果等について、情報・意見の交換を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本国際共同研究加速化基金(B)は、研究代表者が、現地に直接赴いて国際共同研究を加速化させるものである。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックにより、所属機関の方針で「政府の終息宣言まで海外渡航禁止」になっていたため、現地に赴くことができなかった。 そのような状況下で全く研究が進まない可能性があったが、このままでは世界遺産申請期限の2025年に対して望ましくないと考え、現地協力者に依頼してデータを収集し、かつ国際共同フォーラムをオンラインで開催することにより、直接現地の状況を把握はできないながらも研究をある程度進めることができた。特に、国際共同フォーラムを実施することにより、研究成果を共有して意見交換できたのは非常によかった。 以上より、直接データ収集できなかったが、成果を得ることができたことから、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
所属機関における海外出張ガイドラインの策定が進められており、本年度は現地への渡航が可能になる予定である。ガイドラインが策定されれば、できるだけ早急に共同研究相手のチェンマイ大学と連絡を取り、現地に赴いて調査を実施することを予定している。ただし、帯同学生は最小限にならざるを得ないと考えており、その場合には数回に分けて現地調査を実施する。現地調査ができない場合には、チェンマイ大学に依頼してデータの収集を行う。 現地調査としては、人的災害要因(チェンマイ的要因、アジア的要因等)を整理し、昨年度の研究成果の不足部分(特に市場、ショップハウス、宿泊施設データ等)の分析に必要なデータを収集する。また、本来、昨年度実施しなければならなかった建物データの収集、iPadを用いた現地データ取得の有効性の確認とデータ収集を実施する。データを持ち帰ってから、昨年度行なった地理情報システムに対してデータの入力を行い、それらを用いた分析を行う。 それらの結果を踏まえて、国際会議や国際ジャーナルなどで発表できる分から論文への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関における新型コロナウイルス感染症拡大防止のための活動制限指針により、海外渡航は「外務省の感染症危険レベル」が維持されている限り禁止になっている。そのため、本来は国際共同研究協力機関に直接赴いて調査・研究を実施するべきところ、全く渡航ができず、次年度使用額が生じた。 現在、所属機関において、ポストコロナの研究者交流・学生交流の再開を見据え、教職員の海外出張について検討を開始している。本年5月中には基本的なガイドラインが策定される予定である。これが決定された場合には、現地に直接渡航し、研究を順次遂行していく予定である。 まずは、先方研究者とオンラインで打ち合わせを行う。また、昨年度までの研究内容を精査し、不十分だったところのデータ収集、並びに調査の方針を確認する。具体的には、以下の3点について、滞在期間が許される範囲で行う。1)チェンマイ歴史地区におけるアジア的災害要因並びにチェンマイ的災害要因についてデータ収集・分析、2)歴史的建造物の図面データ、3)iPadを利用した危険箇所収集の試験的実験。
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