研究課題/領域番号 |
20KK0104
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
松野 隆 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (90432608)
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研究分担者 |
関本 諭志 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50783817)
郭 東潤 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究領域主幹 (10358450)
青野 光 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10623712)
西田 浩之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60545945)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 流体制御 / 境界層 / 乱流遷移 / 後退翼 / プラズマアクチュエータ |
研究実績の概要 |
後退翼の横流れ不安定による乱流遷移について,旅客機の飛行条件でも利用可能なプラズマアクチュエータ (PA) による制御手法を確立することを目的として研究を行っている.本年度は,横流れ制御に最適化した極低擾乱 PA の開発と,ロバストネスのある周期擾乱による不安定成長抑制手法のコンセプト検討および予備実験を行った. 極低擾乱PAの開発においては,翼面の平滑化および体積力導入位置の空間解像度の向上を目指し,フォトリソグラフィによる薄膜・微細放電電極を持つPAを製作した.この結果,電極厚さ20 μm, 擾乱の波数200 μmスケールのPA素子製作を実現し,擾乱生成に十分な放電が発生することを確認した.また,大スケール模型への適用を念頭に置いた銀ナノ粒子含有導電性塗料を用いた電極の形成法についても合わせて検討を行い,風洞試験に十分な噴流生成が可能であることを実証した. 不安定成長抑制手法のコンセプト検討については,先行研究より遷移遅延効果が確認されている孤立ラフネス (DRE) を後退翼に設置し,その境界層速度分布への影響を調査した.また同様の効果を得るため,放電点が孤立する鋸歯型PA(プラズマDRE)を同様に設置しその影響を調べた.実験は鳥取大学の低速風洞で行い,プレストン管および熱線風速計による境界層速度プロファイルならびにスパン方向渦列間隔の計測を主に行った.その結果, DREおよびプラズマDRE双方とも,設計通り任意の縦渦間隔を形成することが可能であることを確認できた.また,1次の横流れ不安定により生成される縦渦列と比較し,導入した不安定波の振幅が大きくなっていることが分かった.この際,本試験においては乱流遷移は目的に反し促進されており,導入する渦の強度を制御する必要があることが明らかになった.これは上記した極低擾乱PAの適用や,PAの低電圧化により達成が可能と期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内における試験については,計画していたJAXA低乱風洞を用いた試験が新型コロナウイルス感染症の影響等により実施できず,低乱・高速条件における試験を実施することを断念した.また,外部要因により境界層遷移可視化に用いる計画であるIRカメラの導入が遅れ,境界層遷移の面計測が未実施であり,計画から遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は7月のJAXA低乱風洞試験によりプラズマDRE及び横流れ抑制 (CFR) PA駆動適用時の境界層計測を実施し,次年度の共同実験のための基礎データと設計情報を取得する.また,極低擾乱PAについては,素子のアレイ化を実現し,境界層流れへ適用時の設置位置決定手法について,数値解析および進化計算による最適設計法を確立する.なお現在も新型コロナウイルス感染症の影響は続いており,今後,研究加速のために,外部状況を見ながら積極的に試験を実施するともに,最適設計法を用いた実験の効率的実施により,想定される影響を最小化していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について,購入を計画していた赤外線カメラの納期の大幅な遅れにより,年度内の納入ができなかったことが次年度使用額が発生した理由である.現在調整を行っており,本年度上半期中の導入が可能であると考えている.
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