研究課題/領域番号 |
20KK0105
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高井 伸雄 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10281792)
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研究分担者 |
越川 武晃 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10399983)
重藤 迪子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (90708463)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | ネパール / バクタプル / カトマンズ盆地 / 速度構造モデル / 強震動評価 |
研究実績の概要 |
2022年度は9月に現地渡航し,カトマンズ盆地内にこれまでに設置した強震観測点およびバクタプル市内の主要地点でのアレー微動観測を実施した.微動観測の実施には,2020年度に導入し,国内のテストフィールドで操作性等を確認してきてた地下構造探査用の高感度地震計を用いた,現地の観測実施は9日間で,計15地点を対象とした.得られた微動データは,SPAC法により位相速度を求め,その位相速度を逆解析することで速度構造を推定した.また,位相速度から直接平均S波速度等も求め,地形との比較研等を実施した.観測地点の地質構造と観測結果は良く対応し,高周波数側の位相速度は,岩盤サイトで100~約300 m/s,湖成堆積層サイトでは100~200 m/s,河成堆積層サイトでは100~250 m/sとなり,平均して硬い岩盤サイトで高く,軟弱な堆積層サイトで低くなっていた.微動観測には4点の正三角形アレーを用いて,各点三成分の記録を得ており,中心点の記録のH/Vスペクトル比を計算し,表層地質区分と比較した.表層地質区分によりH/Vスペクトル比のピーク周波数は明瞭に異なり,岩盤サイトでは約2.5~4.0 Hz,湖成堆積層サイトでは約0.3~0.8 Hz,河成堆積層サイトでは約0.3~1.0 Hzにピークが見られた.地盤増幅特性の指標として用いられることの多い深さ30 mまでの平均Vs(Vs30)を計算し,標高,地盤の種類と比較した.標高とVs30には正の相関が見られ,岩盤サイトではVs30が大きく,堆積層サイトでは小さく求まった. これまでに引き続き,2015年ネパール・ゴルカ地震の余震記録の収集,整理を実施した.主要な余震記録は国際的にも利用要求が高いため,国際誌において公開した.また,現地共同研究者と共にカトマンズ盆地内のバクタプル市および周辺の地質学的情報および,地震記録の資料収集を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度まで,日本国およびネパール国の往来が原則禁止されていた状況で,現地渡航による観測点の設置,速度構造探査の実施が叶わなかったことが響いている.しかし2022年には渡航が可能となり,予定していた微動観測が可能となった.また,これまでに代表者等により蓄積された基礎データおよび強震観測記録等を用いて,国内・現地での研究者により検討が進められている.特に,これまでに設置した強震観測点で記録された記録から,構築した速度構造モデルが検討され,微動観測結果から速度構造が推定されたことは大きな進展である.
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今後の研究の推進方策 |
2020年11月より開始した本研究において,2020,2021年度内での渡航が叶わなかったが,現地研究者と連絡を密にとって現地資料の収集を実施してきた.2022年度は幸渡航がかのうとなり,微動観測が実施できた.2023年度も現地渡航を目指し,引き続き現地共同研究者と共にバクタプル市および周辺の地質学的情報の資料収集を実施し,地質学的見地からの盆地構造を把握し,ゴルカ地震時の余震観測データ,建物被害データを収集しデータベース化する.より詳細な地盤増幅特性の把握のため,強震観測点および地下構造探査地点を,すでに収集した既往の地下構造に関わる資料と建物被害分布を考慮しつつ選定する.バクタプル市はカトマンズ盆地の東側端部に相当しており,十分に基盤の傾斜構造が把握されていない.そこで,2021年度の成果であるレシーバー関数による検討を基に,微動アレー観測および強震観測を展開してバクタプル市周辺の詳細な深部地下構造の推定を行う.これにより,観測点直下の,深~浅部の1,2次元速度構造モデルを推定する.2022年度に実施した観測および解析は2023年度も継続され,現地共同研究者及び現地共同研究者の指導するポスドク・大学院生を日本側研究者が指導することで,現地への探査手法の技術移転が実施される.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度までのCOVID-19の蔓延による社会情勢から,国内・現地渡航の旅費の支出がなかったため.2022年度に繰り越したため,2023年度も2021年度までの分の作業が実施される.
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