研究課題/領域番号 |
20KK0107
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴山 知也 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40143391)
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研究分担者 |
高畠 知行 近畿大学, 理工学部, 准教授 (30823380)
三上 貴仁 東京都市大学, 建築都市デザイン学部, 准教授 (80732198)
中村 亮太 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90805938)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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キーワード | 北極海 / 高波 / 高潮 |
研究実績の概要 |
カナダ・オタワ大学のニストール教授とは、コロナウィルスの伝播の影響により、直接には訪問できないため、密接に連絡を取りつつ研究を進めた。本年度は主には北極全体の物理場の予測をするための数値モデルの開発を進めた。PMG ( Ohio State University’s Polar Meteorology Group ) らが開発した、極地計算に最適化した次世代気象予測モデルPolar WRFを用いて、低気圧接近時の気象状況を再現した。次に Chenら(2003)が開発した有限体積法・非構造格子海洋モデルFVCOM(The Unstructured Grid Finite Volume Coastal Ocean Model) の中に波浪推算機能が追加されたFVCOM-SWAVE機能を用いて高潮・波浪場の計算を行った。SWAVEはDelft University of Technologyで開発されたモデルで、第3世代の浅海域波浪推算モデルである。Polar WRFによる風速、気圧の解析結果は観測データと概ね一致した。多少の差異が見られたがその要因は、観測地付近の構造物による影響や地形データの解像度の低さが考えられる。FVCOM-SWAVEによる有義波高、高潮偏差の解析結果は観測データに対してやや過小評価となった。これは, 計算領域を作成する際に海氷のある海域は陸と同等して扱ったため, 海上の風域が減少し, 実際の水位より低く算出されたためと思われる。将来的に海氷が完全に消失した状態でAC12のような強い低気圧が発生した場合に備えて、今回の計算と同様の条件で海氷が消失した場合の風速、波浪、潮汐の状態を確認することが必要となることが解った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルスの影響による渡航規制のために、直接に研究者が行き来することはできなかったが、密接に連絡を取り合うことで研究は概ね順調に進展した。双方のモデルの結果を参照しつつ、より細かい地域での海水の共同、波浪の伝播の検討ができるように進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
オタワ大学のニストール教授と協力して研究を進める。本年度は研究代表者が2022年1月にオタワ大学に滞在し、共同研究をリードする。オタワ滞在中に日本側の研究の状況を詳しく説明し、カナダ側の研究進捗状況との照合を行い、必要に応じて研究計画を修正していく。分担者も新型コロナウィルスの伝染が沈静化すればオタワ大学に滞在する予定である。北極海の気候、高波、高潮モデルの高度化を行い、PolarWRFとFVCOM-SWAVEを組み合わせた数値モデルの開発を進める。波浪については, 観測ステーションにおける計測結果が得られないために,観測衛星による観測値を比較対象として使用する予定である。海氷の下の海水運動をどう捉えて数値モデルに取り入れていくかについても検討を試みる。カナダの北極海沿岸域では氷山崩壊など地すべりによる津波の危険性があるため、これを考慮できるモデルの開発が必要であり、3次元固気液三相流体解析ツール(OpenFOAM)を用いた数値解析を応用する。この方法では、土砂や氷塊の移動と水面変化を一体的に計算できるため、高い精度で津波の挙動を再現できると期待している。氷山崩壊による津波発生機構については、津波水槽を用いた実験結果も併せ用いて研究を進めていく。北極域を含めて、実際の沿岸災害がまだ生じていない地域においても災害意識の高まりがみられるものの、知識の普及が情報の質の面でまだ十分でない地域も多いと想定している。災害に関する基礎知識や地域での災害の備えは、避難行動の特性に大きな影響を与えると考えられるため、状況を地域ごとに正確に把握し、避難行動モデルに反映させていく必要がある。北極海に住む人々の災害意識や備えの程度を分析した例は過去にないため、現地での質問紙調査の実施の方法を、質問内容を含めて検討する。調査結果を避難モデルに取り入れていく可能性をこれまでの経験を踏まえて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの伝播により、カナダへの渡航ができず、その分の海外出張旅費と先方と対面で行う共同研究で必要とする経費を使用しなかった。共同研究を推進するために直接先方に対面することは必要なため、次年度に使用したい。
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