研究課題/領域番号 |
20KK0107
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴山 知也 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40143391)
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研究分担者 |
三上 貴仁 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (80732198)
高畠 知行 近畿大学, 理工学部, 准教授 (30823380)
中村 亮太 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90805938)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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キーワード | 海岸侵食 / 北極 / 高波 / 高潮 / 津波 |
研究実績の概要 |
オタワ大学ニストール教授が2023年9月に早稲田大学で開催した世界の沿岸自然災害に関する研究集会に出席し、研究の内容を早稲田大学側に説明した。研究協力者の稲垣直人博士が、オタワ大学に2023年4月から9月に滞在し、ニストール教授との共同研究を進めた。この間、北極圏のIqaluit町とResolute村に5月に滞在し、氷の状況と礫浜の状況を調査した。また、2024年2月から3月にかけてニストール教授が早稲田大学に滞在し、北極圏調査の現状について、日本チームに詳しく説明し、今後の方針を定めた。数値モデルについては北極海航路開拓の拠点となるベーリング海峡及びアリューシャン列島周辺の地域が、温暖化が進む中でどのような気象場の変化を遂げるのかを分析した。中村ら(2016)が開発した擬似温暖化手法を用いて、2050~2059年の気温、海面水温、相対湿度を入力し、IPCC第6次評価報告書(2022)によって例示されたSSP2-4.5シナリオを基に将来気候の気象を擬似的に再現した。具体的にはメソスケール気象予測モデルWRF 4.3 (Skamarock et al.,2018)を用いて将来の気象場を予測した。気象場の予測結果は、気圧・風速ともに一部の期間や地点を除いて、対象期間内の現在気候と概ね同様の気圧配置・風速分布となり、極端な変化は見られなかった。風速分布の最大・最小の変化、Adak 及びNikolskiの2地点における対象としたアリューシャン低気圧が接近した期間では10(hPa)程度低い気圧、Nomeの一部期間及びAnchorageのほぼ全期間における最大15(m/s)程度の風速差など、現在気候とは異なる数値も算定結果に含まれている。局所的な気象条件は変わりうる可能性があり、中道的な温暖化シナリオであるSSP2-4.5でも大きな影響を受ける地域もあることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、2021年度までに実施予定であったオタワ大学訪問が遅れ、また、北極圏の村での調査も遅れていた。その後のコロナ禍の解消により、2022年度、2023年度と早稲田大学、オタワ大学間の相互の研究滞在とカナダ国内、北極圏の町村における現地調査を実施することができた。特に、これまでに2度にわたってNunavut準州Resolute村の調査を実施できたことが全体の状況の理解と共同研究の進展を助長している。2023年度は2度にわたってニストール教授が早稲田大学に滞在し、また、稲垣博士が半年ほどオタワに滞在して共同研究を進めたことも進展に寄与している。一方でPolar WRF、疑似温暖化、FVCOMを用いた北極圏の波浪現象を解析する数値予測モデルの開発は順調に進んでいる。また、災害時の住民避難のモデルについても、カナダ・バンクーバーにおける住民避難実態調査、鎌倉市や和歌山市を対象として開発してきた数値モデルを例として、ディジタルツインを目指しての開発が進んでいる。上記よりコロナ禍によって遅れていた現地での共同研究が実施できた点からも、2021年度におけるコロナ禍による遅れを取り戻したと考えられ、全体としておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響を受けていた日本、カナダ間の共同研究実施のための相互交流訪問が復活したため、本年度はオタワ大学のニストール研究室のキム助手が2024年7月から8月にかけて早稲田大学に滞在し、主に住民の沿岸災害時の避難のモデルについての共同研究を行う。神奈川県内の自治体の避難について共同で調査し、これまでにニストール教授、キム助手、稲垣助教が実施したバンクーバーでの避難調査結果と比較しつつ、北極圏の村の避難方法を検討する。また沿岸災害数値予測モデルについては、従来から本研究チームが開発してきた風波による海浜変形モデルは概ね砂浜を対象としている。一方でResolute村の海岸をはじめとする調査対象地域近隣の海浜は5 mm程度の粒径を持つ礫浜であるため、現有の海浜変形モデルはそのままでは使用できない。本年度は北極圏の海岸を対象として、礫浜海岸の侵食予測モデルの構築も行う。海浜変形モデルXBeachでは粒径が0.2 mm程度の比較的粒径の小さな海岸が主な対象であるため, 移流拡散方程式を用いて漂砂量を求めているが, 礫浜は粒径が大きいため漂砂が浮遊しながら移動するとは考えにくい。 そのため礫浜モデルでは掃流砂量式を用いて漂礫量を求めることとする。これにより、温暖化による海氷面積の減少に伴う風波の発達と、波高の増大に伴う海岸の侵食の進行による沿岸災害機構の変化という、近年頻繁に観察されるようになった現象を具体的に検討する数値モデルを構築することができるようになると期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で全体計画に遅れが生じていて、特に旅費の使用が遅れ気味であった。2022年度後半から進行は回復しつつあり、2024年度で遅れは解消する予定である。
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