研究課題
本研究は研究代表者らが最近開発した高い耐食性および優れた超弾性特性が同時に発現するCo基ホイスラー合金を対象に、超弾性特性および加工性の向上に向けて研究を行い、日本、ドイツとチェコ、3ヶ国による国際共同研究チームで積層造形技術等を駆使して、テーラーメイド型新規CoCr系超弾性生体材料の開発に挑戦する。本研究の4年目は、新型コロナウイルスの影響で実施できなった現地での共同研究を実現した。まず、8月まででは日本国内で積層造形用に選定した合金組成でバルク試料を作製し、平衡条件である各熱処理温度における組織形態および非平衡条件である凝固組織を調査し、積層造形試料の評価に用いる基礎データを構築した。代表者は9月~11月にかけて共同研究先であるドイツ・カッセル大学に赴き、指向性エネルギー堆積法(DED)、レーザー溶融法(SLM)および電子ビーム溶融法(EBM)、3種類の積層造形方式の条件出しを試みた。特にSLMに関しては一ヶ月以上の長いマシンタイムが確保されたため、レーザーパワーおよび掃引速度などのパラメーターを系統的に調査した。その結果、一定の条件パラメーターの組み合わせ範囲内においては本CoCr系合金の積層造形が可能であることが分かった。これらのパラメーターを用いることで、10 mm x 10 mm x 10 mmサイズの積層造形試料の作製に成功した。しかし、これらの試料を用いてサイクル熱処理を試みたところ、今までのバルク試料とは異なり、異常粒成長による単結晶育成ができないことを判明した。今後、原因解明のため、各積層造形段階における組織形態、結晶方位分布および析出物の有無など詳細について調査する。
3: やや遅れている
新型コロナウィルスの影響で2021年度に計画していた外国出張が2023年度にようやく実現したため、本研究は全体的にやや遅れている。
本研究の5年目は継続してCoCr系超弾性生体材料における積層造形技術の応用可能性について探索する。4年目の共同研究の実施より、異なる条件の大量の積層造形試料が作製でき、その分析を来年度の前半にかけて集中的に行う。異常粒成長による単結晶育成の問題を解決するために、SEMおよびEBSDを用いて積層造形試料を観察する。また、追加熱処理を行うことで組織が変化する可能性があるため、その詳細についても調査する。さらに、析出物の組織形態を調査し、必要に応じてTEMやSTEMによる観察を実施する。熱処理等により単結晶もしくは集合組織を有する試料が得られた場合、その超弾性特性を評価し、バルク試料との比較を行う。また、今までの積層造形プロセスでは2020年に開発したCoCr系超弾性合金の組成を用いたが、昨年度新たに開発した優れた超弾性および低ヤング率を示す新組成の粉の作製が完了したため、新組成を用いてDEDおよびSLMを行い、その組織及び機械特性を旧組成と比較する。
新型コロナウィルスの影響で本研究は全体的に1年~1年6ヶ月程度の遅れが生じているため、次年度使用額が生じた。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)