Modulation Excitation (ME)法は分光法におけるシグナル/ノイズ(S/N)比を劇的に向上させ、物理・化学現象の動的過程に関与する種を選択的に解析することのできる強力な手法である。本研究では、このME分光と、触媒動作条件下で触媒の分光学的評価と触媒活性・選択性の測定を同時に行う手法と定義されているOperando観測とを組み合わせることで二酸化炭素の水素化反応や排ガス浄化反応の機構研究を行い、触媒反応場の設計指針確立を目指している。 2023年度は、既存触媒について、XAS、IR分光を用いた機構解析の継続を行った。特に、ME分光とPhase-Sensitive Detection(PSD)解析の組み合わせや、Multivariate Curve Resolution (MCR)解析を適用することで、反応には関与しない種(Spectator)に埋もれた真の活性種の状態を確認した。Re/TiO2を用いたCO2水素化反応では、Re金属クラスター/ナノ粒子と、単核のRe種の両方が協奏的に働くことで反応が進行していることを明らかにした。現在、理論計算を用いた検討を進めている。それら検討から得られた触媒設計指針を基に、新触媒の開発にも着手し、すでに有望な成果を得ている。 同様の研究方法論は、二酸化炭素の水素化反応以外の反応系に対しても有用である。実際に、排ガス浄化反応に対して適用し、触媒反応機構研究、それに立脚した触媒開発を行った。
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