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2022 年度 実施状況報告書

格子歪による単一スピン状態の制御とフォノン媒介スピン間相互作用

研究課題

研究課題/領域番号 20KK0113
研究機関筑波大学

研究代表者

黒田 眞司  筑波大学, 数理物質系, 教授 (40221949)

研究分担者 Traore Aboulaye  筑波大学, 数理物質系, 助教 (20837455)
秋山 了太  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40633962)
研究期間 (年度) 2020-10-27 – 2025-03-31
キーワード量子ドット / 単一スピン
研究実績の概要

本研究は、フランス国立科学研究センター(CNRS)のネール研究所のL. Besombesらとの共同研究により、半導体ドット中の単一磁性スピンの種々の振舞い、特に格子歪との結合の様態を明らかにし、格子振動によるスピンの変調と制御を実現し、格子振動を媒介としたスピン間の量子情報伝達への道を拓くことを目的としている。今年度は以下の研究を行った。
(1) 前年度に引き続き、CdTe/(Cd,Mg)Teの量子井戸(QW)構造における励起子の零次元閉じ込め構造の作製と光物性測定を行った。これは従来作製して来たCdTe自己形成ドット(SAD)に代わり、QWのCdTe井戸層幅の揺らぎにより励起子を面内でも閉じ込め、零次元に束縛された励起子と単一Crスピンとが相互作用する系を実現するものである。微量のCrを添加したQW試料の顕微フォトルミネッセンス(PL)測定において、単一のCrスピンとの相互作用に伴うと思われる励起子発光線の分裂を観測することに成功した。
(2) 一方、Cr添加のCdTe SADでは、これまで単一Crスピンとの相互作用による励起子発光線の分裂が観測されているが、その割合が非常に低いという問題に直面している。SAD中ではCr原子はさまざまな形で取り込まれている可能性があるため、電子スピン共鳴(ESR)測定によるCrの電子状態の解明を試みた。測定の結果、Crを添加していないCdTe SAD試料においてもCdTe結晶中の欠陥に起因すると思われるESR信号が観測され、その信号強度はCrの添加により増大することが明らかとなった。また、Cr添加SAD試料においては、Cr3+, Cr+と思われる信号が観測され、されにCr+の信号は光励起により増強されることを見出した。これらの結果より、SADの作製過程におけるCdTe結晶中の欠陥の生成がCrの添加により促進され、この欠陥がドット中の励起子発光を阻害する要因となっている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CdTe SADにおいて単一Crスピンとの相互作用に伴う励起子発光線の分裂が観測される割合が低いという問題を解決する手がかりが得られ、また一方で、SADに代わる試料構造としてCr添加のCdTe/(Cd,Mg)Te QW構造において単一Crスピンとの相互作用に伴うと思われる励起子発光線の分裂を観測することに成功したため。

今後の研究の推進方策

引き続き、励起子と単一Crスピンとの相互作用による発光スペクトルの分裂が高い確率で観測される試料の作製を目指し、表面弾性波(SAW)によるCrスピン状態の変調の観測を試みる。

次年度使用額が生じた理由

試料作製に用いるMBE装置の不具合が生じ、実験の一部を翌年度に繰り越したため。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [国際共同研究] CNRS, Neel Institut(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      CNRS, Neel Institut
  • [雑誌論文] Spin dynamics of positively charged excitons in Cr+-doped quantum dots probed by resonant photoluminescence2022

    • 著者名/発表者名
      V. Tiwari, M. Arino, S. Gupta, M. Morita, T. Inoue, D. Caliste, P. Pochet, H. Boukari, S. Kuroda, L. Besombes
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 106 ページ: 45308

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.106.045308

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] CdTe 自己形成ドット中の Cr の荷電状態の ESR による検出2023

    • 著者名/発表者名
      井上 智貴、安藤 瞬、稲井 聡志、塩川 凛人、丸本 一弘、H. Boukari、L. Besombes、黒田 眞司
    • 学会等名
      第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Cr を添加した CdTe 自己形成ドットの ESR 測定2022

    • 著者名/発表者名
      井上 智貴、安藤 瞬、稲井 聡志、塩川 凛人、丸本 一弘、ボウカリ エルベ、ビソンブ ルシアン、黒田 眞司
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会

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公開日: 2023-12-25  

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