研究課題/領域番号 |
20KK0122
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
深見 一弘 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60452322)
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研究分担者 |
岡崎 豊 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (20794465)
松本 歩 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (30781322)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 時空間パターン形成 / らせん |
研究実績の概要 |
本年度は新たな系としてPd-Cu二元系合金電析における時空間パターン形成に取り組んだ。平滑電極上でPd-Cu二元系合金を電析すると,自発的な相分離がみられ,電析条件によってはスパイラルの時空間パターンが自発的に形成することを見出した。この電析物の断面を観察すると自発的にPd-richとCu-richの領域が多層構造を形成していることが分かった。この電析をポーラスアルミナ(シリンダー状ナノポア)電極を用いて実施したところ,ナノポア内部においてPd-rich領域が自発的にらせん状構造へと自己組織化することを見出した。この自己組織化メカニズムについて,反応-拡散モデルをもとに説明することに成功した。 その他,派生する研究課題として,CdSe/CdSコアシェル型の量子ロッドをポリマーフィルム中に分散させ、延伸法でロッドを配向させることにより直線偏光発光性(LPL)フィルムを作製した。LPLフィルムと位相差フィルムを組み合わせた「発光式円偏光コンバータ」を提案し、高輝度かつ高純度の円偏光を容易に作り出せることを実証した。また,中抵抗および低抵抗シリコンのPtナノ触媒のアシストによるシリコンのエッチングを行い,垂直孔とメソポーラス層の複合ポーラス構造を作製することに成功した。抵抗率によって垂直孔の長さとメソポーラス層の厚さの割合が大きく変化することがあきらかとなった。電気化学測定や数値シミュレーションにより,シリコンの抵抗率によるエッチング挙動の違いを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電析における時空間パターン形成をナノポーラス空間内において行うといった境界条件を与えることでらせん状のナノ時空間パターン形成がみられることを世界にさきがけて明らかにしたこと,CdSe/CdSなどの材料を自己組織化的に配列させることで円偏光コンバーターの作製に成功するなど,一定の成果が得られており,概ね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでコロナ禍の影響を受けて,人的交流は当初予定通り実施できていない。更なる研究の加速のために,本研究に関わる研究者のボルドー大学への派遣を積極的に進める。また,博士後期課程の大学院生についてもこの機会を利用して最先端の国際共同研究へ参画させ,世界レベルでの実践力を養う。研究内容としては,らせん状ナノ構造体の自己組織化メカニズムをさらに追求し,カイロオプティカルな新しい特性の設計を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響を受けて,ボルドー大学への研究者派遣が予定通り実施できなかった。この分の旅費は次年度に繰越し,令和5年度に研究者派遣を行う予定である。
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