研究課題/領域番号 |
20KK0129
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
上田 晃弘 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (10578248)
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研究分担者 |
末川 麻里奈 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (00825656) [辞退]
冨永 淳 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (20788632)
西田 翔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (40647781)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | イネ / 塩アルカリストレス |
研究実績の概要 |
本研究では、タイ東北地方の塩アルカリ害が発生した水田での稲作を可能にするために、塩アルカリ耐性を強化したイネの創出を最終目的とする。塩類集積土壌の中でも、塩害とアルカリ害を併発した塩アルカリ害は作物生産に最も深刻な影響を与える。塩アルカリ害耐性を強化したイネの創出には、現地の塩アルカリ害がどの程度であるのかを把握する必要がある。本年度はコロナ禍により延期せざるを得なかった現地調査を実施した。ナコンラチャシマー県の塩害発生水田4か所を訪問して土壌分析を行ったところ、pHは最大で9.0であり、電気伝導度(EC)は13.2 mS/cmであることが分かり、極めて深刻な塩アルカリ害が発生していることが明らかとなった。イネの塩アルカリ耐性を強化するための遺伝子候補の探索では、カリウム輸送体OsHAK17の解析を行った。酵母発現系を用いた機能解析の結果、OsHAK17はNa駆動型K輸送体としての機能を有していることが示唆された。Na感受性酵母変異株でOsHAK17遺伝子を過剰発現させたところ、塩耐性とともに塩アルカリ耐性を向上させることが明らかとなった。塩害はイネ体内のK濃度を低下させることはよく知られているが、塩アルカリ害は塩害単独処理よりもイネに深刻なK不足を引き起こす。このことからOsHAK17は塩害および塩アルカリ害の両方の耐性強化に有効な遺伝子であることが示唆された。RNA seq解析により耐性品種では多くの機能未知の遺伝子群の発現誘導が確認されているため、これらの機能解析も引き続き実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた現地調査を実施することができたこと、また塩アルカリ耐性候補遺伝子の同定が進んだことから、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
イネの塩アルカリ耐性向上に必要な遺伝子候補としてOsHAK17を同定したが、耐性品種を用いたRNA seq解析では多くの機能未知の遺伝子群の発現誘導が確認されている。これらの機能解析を進めることで、イネの塩アルカリ耐性強化に有用な遺伝子群の同定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により遅れていた現地調査のための旅費および耐性品種のRNA seq解析に使用予定である。
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