研究課題/領域番号 |
20KK0130
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中山 二郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (40217930)
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研究分担者 |
森永 由紀 明治大学, 商学部, 専任教授 (20200438)
町田 光史 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (30778163)
善藤 威史 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50380556)
中尾 洋一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60282696)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 腸内フローラ / アジア / 胆汁酸 / 2型糖尿病 / 肥満 / バクテロイデス / プレボテラ |
研究実績の概要 |
本研究は、アジア各国に刻々と侵襲する現代食による代謝異常症の惹起に、腸内細菌叢の変容が関連しているという仮説を検証することも目的に、インドネシア、フィリピン、モンゴル、タイの4か国にて、食と腸内細菌叢と生活習慣病の関連性を調査している。 これまでに、インドネシア、フィリピン、そしてモンゴルにおける解析を遂行した。インドネシアの健常者は概ねプレボテラ属細菌を主体とする腸内細菌叢を有しているが、肥満者と2型糖尿病患者においてプレボテラ属細菌の相対存在量が大きく低下し、肥満者においてはロンボウスチア属、糖尿病患者においてはバクテロイデス属がプレボテラに変わって増加している傾向を見出している。特にロンボウスチア属の増加は高脂肪食の摂取に相関していた。 フィリピンの調査は、都心部のマニラと地方部のアルバイで行った。その結果、アルバイの住民の腸内細菌叢はプレボテラを主体とするタイプが多いのに対し、マニラの住民はルミノコッカセアエ科を主体とするタイプが多いことを見出した。そして、プレボテラ型の保有者には、ほとんど2型糖尿病患者がいないのに対し、ルミノコッカセアエ科型の保有者には、有意に多く2型糖尿病患者が含まれることを見出した。ルミノコッカセアエ型の保有者はプレボテラ型の保有者に比べて、脂質を多く摂取する食習慣を有しており、そのような食が2型糖尿病を惹起していることを示唆した。 モンゴルでは、都心部のウランバートルと旧来の伝統的生活習慣を営む遊牧民の比較解析を行った。その結果、食の現代化に従いプレボテラ型からバクテロイデス型への腸内細菌叢が移行し、それに従い2型糖尿病患者が増加するという傾向が見出された。 総じて、アジア諸国では、食の現代化によりプレボテラ属細菌の腸内定着量が減少し、それに相関して現代生活習慣病の肥満や2型糖尿病が増加していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の概要に示したように、当初の研究目的であ、アジア各国に刻々と侵襲する現代食による代謝異常症の惹起に、腸内細菌叢の変容が関連しているという仮説の検証を着々と進めている。特に2022年度は現地研究者との有機的な交流も密に行い、当初調査を予定していた、インドネシア、フィリピン、モンゴルでの調査を順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
インドネシアおよびフィリピンにおいては、さらに調査を継続しており、サンプルも収集しているので、その細菌叢解析および代謝物解析を継続する。モンゴルでは、モンゴル国政府の方針で、生物資源の海外への持ち出しの制限が強化されたため、さらなるサンプルの収集については今のところ計画していないが、これまでに収集したサンプルについて、さらなるデータ解析を行う予定である。特に、昨年実施した全メタゲノム解析について、インシリコ解析がまだ完了していないので、こちらについて結果を出していきたいと考えている。加えて、分担研究者の森永らと共同で収集した、地方に住むモンゴル人の健康を支えると言われている国民的栄養食と言われる発酵馬乳と、腸内細菌細菌叢との関連性についても解析していく。タイについては、サンプリングが遅れていたが、昨年、都市部、山間部、その中間部から生活習慣病患者を含む145サンプルの収集を行ったので、その細菌叢解析と代謝物解析を行っていく。2023年度は本国際共同研究加速基金の最終年度となるので、以上の研究成果をまとめ、学会発表、論文発表、さらには自らシンポジウムを企画するなどして、研究成果を公表していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の未使用額2,442,089円で、2022年度の未使用額2,538,079円と2022年度単年度では当初の予算ほぼ全額を使用した。予定では、本年度は、2021年度の未使用額も使用する予定としていたが、2022年度もまだコロナ禍における海外移動の制約が多く、当初の予定以上の海外交流を行うことは困難であった。2023年度は最終年度となるため、国際交流を活発に行い、加えて、海外で収集したサンプルの解析を終了させ、論文発表や国際学会での発表を精力的に行い、2022年度の未使用額に加えて、2023年度配分予定額を加えた約610万円全額を使用する予定である。、
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