研究実績の概要 |
ハマウツボ科(Orobanchaceae)ハマウツボ属の根寄生雑草ヤセウツボ(Orobanche minor)の発芽過程で、細胞壁型インベルターゼの活性調節に関わると予想されるインベルターゼインヒビター様蛋白質をコードする遺伝子のクローニングを行った。この配列は、以前行ったトランスクリプトーム解析によって取得した(Okazawa et al., J. Pestic. Sci., 45, 230-237, 2020)。この遺伝子を大腸菌で発現させ、粗酵素液を調製し、ヤセウツボの発芽種子より細胞壁結合性素蛋白質画分のインベルターゼ活性に対する影響を調べたところ、統計的に有意ではないものの、インベルターゼ活性が低下する傾向が示された。現在、組換えインベルターゼインヒビター様蛋白質を精製を進めており、今後、より正確にインベルターゼ阻害活性を評価する予定である。 本実験は、スーダンにおいて同時に進める予定であったが、現状では現地への渡航が困難であるため、適宜Zoom による Web ミーティングを開催している。 さらに、ヤセウツボの種子中でのプランテオースの局在や、その代謝に関わる酵素の細胞内局在など、発芽種子中の糖代謝に関する重要な生化学的知見を取得し、論文として発表した(Okazawa et al., J. Exp. Bot., 73, 1992-2004, 2022)。 さらに、植物中のストリゴラクトン生合成の精密な制御のため、その生合成に関する研究を進め、未だ不明である生合成ステップについて重要かつ新規の知見を得つつある。今後、この知見を活用することで、宿主の生育や根圏での有益な化学コミュニケーションに影響を与えることなく、宿主からの根寄生雑草の発芽刺激物質の分泌のみを制御可能となると期待される。
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