研究課題/領域番号 |
20KK0133
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
有江 力 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00211706)
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研究分担者 |
児玉 基一朗 鳥取大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00183343)
柏 毅 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 任期付研究員 (60766400)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | バナナ / パナマ病 / 疫学 / 生物防除 |
研究実績の概要 |
ペルーの疑似パナマ病の緊急疫学調査:2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で予定していた現地圃場調査を実施できず、海外共同研究者が所属するペルーINIAおよびUNALMの研究者に依頼して、ペルーのバナナ圃場における疑似パナマ病発生状況の調査、サンプリング、病原分離を行い、分離株を日本へ輸送、日本国内で分子系統解析を実施した。送付されたChanchamayo分離株6株およびSullana分離株(キャベンディッシュ系統バナナからの分離株)4株は、rDNA-IGS領域のシーケンスに基づく分子系統解析でいずれもパナマ病菌レースSR4と近縁のクラスターに属し、レースTR4ではないことを示した。 国産パナマ病菌160527株のゲノム解析によって、コンティグ2の約1/2はコア染色体領域、残りの1/2がアクセサリー染色体領域であることが推察された。このアクセサリー染色体領域には、SIX1ホモログなどエフェクター様遺伝子が複数座乗していた。また、160527株のベノミル処理によって、このアクセサリー染色体領域の大部分を欠損した100-12株を作出、100-12株は、菌の生育は親株と同等であるもののバナナ(島バナナ)に対する病原性を失っていることを示し、同領域に座乗する遺伝子の病原性への関与が示唆された。 生物学的防除を含む低環境負荷型防除体系提案:非病原性 F. commune によるパナマ病の生物防除の可能性をポット試験で再度確認した。非病原性 F. commune の圃場での施用技術のトマトモデル圃場における実証試験を日本国内で2021年3月から継続中である。また、熱帯地域等での生物防除に適した微生物の探索を目的として、サトウキビ等から微生物の分離を試みた。分離された微生物のうち、Bacillus属細菌にバナナパナマ病菌菌糸成長阻害活性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、研究代表者および分担者が2020,2021年度に実施予定であったペルーのピウラ等のバナナ栽培地域圃場での疑似パナマ病の調査を2022年度以降に延期している。しかしながら、代替措置として、パナマ病症状を示すキャベンディッシュ等の品種から分離されたFusarium属菌を農林水産大臣の特別許可の下で日本に輸入、分子系統解析などを実施、レースTR4ではないと判断した。ペルーのINIAおよびUNALM研究者と2回/月程度、zoomによる研究推進会議を行い、研究打ち合わせを行うことで、ペルー国内において、海外共同研究者や海外協力者に調査、採集、分離、接種など研究を分担いただき、研究を推進している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度にはペルーに渡航できる見込みであるため、ペルーのバナナ栽培地域圃場、INIA、UNALMおよび日本の研究室において、以下の4項目の研究を実施する。 (1)ペルーの疑似パナマ病の緊急疫学調査:ペルーのピウラ等のバナナ栽培地域圃場で疑似パナマ病の調査を継続、発生状況を記録するともに、罹病植物および土壌を採集する。採集した罹病植物および土壌は、乾燥および低温条件で保存する。 (2)病原の特定、病原の性状の解明:(1)で サンプリングした罹病植物組織から、選択培地等を用いて病原の分離、分子生物学同定、バナナへの接種による病原性および宿主特異性(レース)の検定を継続する。海外共同研究者に依頼して入手した20株のうち残り10株について解析を進める。さらに、病原の分子系統学的・ゲノム解析、病原性関連遺伝子群のシーケンシング、遺伝子発現解析、菌糸和合群(VCG)検定等を実施、特異診断技術の確立につなげる。(3)特異的に病原を識別できる診断技術の確立:疑似パナマ病の病原の種や宿主特異性に関わる遺伝子・ゲノムレベルの情報に基づき、診断のために何を特異識別すればよいかを協働で検討、その結果に基づき、UNALMの植物病院をはじめ、検査機関等で容易に実施可能なPCR法や、現地圃場でも実施可能なLAMP法による特異識別技術を開発する。(4)生物学的防除を含む低環境 負荷型防除体系提案:バナナパナマ病の、非病原性F. communeによる生物防除の可能性を、さらに、非病原性F. communeと植物賦活剤(プラントアクチベーター) の併用による防除効果ペルーの温室レベルで検証する。非病原性F. communeの圃場での施用技術を確立する。さらに、ペルー地場生物防除資材を探索・選抜する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020、2021年度に予定していたペルーの圃場における調査を実施できず、2022年度に延期して調査を実施するため、旅費などを2022年度以降に使用することとした。
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