ペルーに2023年8月および12月に渡航、協力機関であるUNALM(国立ラ・モリーナ農業大学)等と、2023年8月にワヌコ県ティンゴマリア地域、2023年12月にリマ県マラ地域のバナナ圃場において、疑似パナマ病の発生調査および症状を呈する植物体の採集を行った。いずれの地域で採取した罹病組織からも<i>F. oxypsourm</i>が分離され、これらはLAMP法によって、パナマ病菌、かつ、レースSR4であるとの分子診断結果を得た。rDNA-IGS領域塩基配列に基づく分子系統樹では、アフリカ・中米などで既報のレースSR4株と同一クラスターを形成した。これらの菌株を、ペルーINIA(国立農業研究所)の許可の下で輸出、日本農林水産大臣特別許可の下で輸入、cv. Cavendishへ接種したところ、対照として用いたレースTR4株に比べて弱いながらも病原性を示し、レースSR4であるという分子診断の結果と矛盾しなかった。上記、パナマ病菌およびそのレースの特異識別用LAMPプライマーセットは、(株)ニッポンジーンの協力で開発、間も無く同社から上市予定である。低環境負荷でのパナマ病防除手段として、生物防除資材候補微生物である非病原性フザリウムW5の土壌灌注、および、プラントアクチベーターであるバリダマイシンA茎葉散布のパナマ病発病抑制効果をポット試験で検定し、効果を確認した。また、沖縄本島圃場の土壌から分離した各種細菌株のパナマ病に対する発病抑制活性を検定し、<i>Pseudomonas</i> sp.など、抗菌活性を有する細菌株を見出した。また、この方法に基づき、ペルー土壌をペルーINIAと農林水産大臣特別許可の下で輸入、生物防除に適用可能な候補微生物として、細菌109株および糸状菌22株を分離・取得した。
|