研究課題/領域番号 |
20KK0137
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
森山 裕充 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20392673)
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研究分担者 |
野澤 俊介 玉川大学, 農学研究科, 日本学術振興会特別研究員 (00887458)
小松 健 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60451837)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | マイコウイルス / β₋クリソウイルス / 2本鎖RNAウイルス / イネいもち病菌 / 疫病菌 / メコンデルタ / 病原性変動 / 微生物培養 |
研究実績の概要 |
本研究ではベトナム国カントー地方の農作物に重大な被害を齎す植物病原菌に感染するマイコウイルスの存在状況を調査し、アジア穀倉地帯メコンデルタの農業生産現場における植物病原菌の新たな防除法への寄与を目的とする。本研究プロジェクトが開始された2020年11月以降から現在に至るまで、日本国及びベトナム国におけるコロナウイルス感染症対策により、双方の研究者同士が直接渡航して研究を実施することは出来なかった。しかし、この間、研究提案書に記載した如く、14年前にベトナム国で採取したイネいもち病菌とマイコウイルスの材料を元に、日本国側で森山研究グループおよび小松研究グループで、マイコウイルス学的、また植物病理学的観点において、未だ解決されていない研究内容的について研究を進めてきており、近い将来に双方の研究者渡航が可能となった際に、一気に研究を推進させていくべく準備を進めている。相手国のベトナムカントー大学研究者達とも、電子メールによる交信だけでなく、Zoomによるオンライン研究会議、報告会も実施してきた。今年度も、研究打ち合わせ会議は定期的に実施して、渡航費の転用に関しては、ベトナム国採取マイコウイルス株を用いた実験系の設備アップ(新規購入や修理)や関連実験消耗品の充実化を図り、着々と双方の渡航が実施された時を想定して研究活動を遂行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究先であるCan Tho UniversityのPlant Pathology GroupのNguyen Thi Thu Nga准教授、Le Phuoc Thanh講師やLE Minh Tuong講師、そして現地における研究統括者であるLe Van Vang学府長と、オンラインでキックオフミーティングを2021年1月11日に実施し、本研究プロジェクトの4年間の研究概要を説明した。また第1回目の合同研究報告会を2月22日に実施し、当研究グループにおける研究報告を森山グループから2名(博士学生、修士学生)、小松グループから1名(博士学生)が行い討議した。日本側グループの研究内容として、ベトナム国で2000年に採取したイネいもち病菌マイコウイルスMoCV1-AとMoCV1-Bの宿主菌内におけるコピー数変動とイネに対する病原性との相関関係についての調査(イネ葉上で感染後に5種のウイルスゲノムの変動をRT-リアルタイムPCR)する実験系の立ち上げと一部結果についてと、上述の2種のマイコウイルスを日本採取のイネいもち病菌に菌糸融合で感染させる系の確立と、ウイルス感染が日本菌株の病原性に付与する影響についての調査結果について一部報告を行った。Nguyen Thi Thu Nga准教授からは、MoCV1-Bマイコウイルス株を導入した際に、観察された日本菌株の病原力低下に関する実験は、双方の渡航が可能となった際には直ちに着手する方針が提案された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度もコロナウイルス感染の早期収束の目途は立たず、日本側からベトナム国カントー大学に直接出向いてのマイコウイルス探索研究の実施は困難であることが予想される。そこで、当面は、日本国内で研究手法を推進することに専念する。まず、イネ感染葉上のマイコウイルスのRT-リアルタイムPCRと、ウイルス導入菌株の病原性試験について、国際イネ判別品種を検定イネとして継続して研究を行う。この際、既にベトナム国で採取したマイコウイルスと、日本国内で採取したマイコウイルスについての比較も行い、ベトナム株と日本株の相違について、これまでに主として得られてきた生化学的知見以外の病原性変動や、宿主菌に対する生育阻害の相違について精査する。更に、本来はベトナム国で行う予定であった、近年メコンデルタ地帯の気候変動による洪水や干ばつの影響で深刻化する疫病菌Phytophthora属やColletotrichum属のマイコウイルス調査に関しては、日本国内で採取した菌株を材料として日本国内ではこれらの植物病原菌にどのような種のマイコウイルスが感染するのかを調査しておき、カントー地方におけるスクリーニングが着手された際の指標とする。また、コロナ収束後は、カントー大学からの研究者、大学院生の派遣予定もあるので、研究環境の充実化(機器整備)も予算範囲内で鋭意改善準備を進めておく。現況については、およそ2か月に1度のペースで研究報告を続けて行き、双方で研究進度と方針の確認を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度11月以降も、新型コロナウイルス感染の影響のため、ベトナム国カントー大学への渡航することは出来ない状況であった。従って、2021年2月の渡航費の使用は中止とした。渡航費予定とした金額に関しては、本共同研究の中心的な材料であるマイコウイルスのRNA遺伝子やウイルスタンパク質の精製実験に不可欠な冷却微量遠心機の購入に充てた。新規購入した理由は、25年前に科研費で購入した同型の遠心機が部品製造中止の為に修理が不可能だったために廃棄処分したため(78000回使用記録有り)。本機器は、ベトナム国カントー大学からの研修生や大学院生が来られた場合にも完備すべき機材であり、本研究期間全体で使用する機材である。
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