研究課題/領域番号 |
20KK0139
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
深澤 遊 東北大学, 農学研究科, 助教 (30594808)
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研究分担者 |
佐藤 博俊 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (10635494)
松岡 俊将 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 講師 (70792828)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 枯死木分解 / 菌類 / 生物地理 |
研究実績の概要 |
北極を囲むようにユーラシア大陸および北米大陸の北部に広がるトウヒ属樹木を主体とした北方林は、地球上で最大の陸上生態系であり、膨大な木質バイオマスを有することから、その動態は地球上の炭素収支に甚大な影響を及ぼすと考えられている。木質バイオマスは枯死木として分解されることで大気中にCO2を放出するが、一部は分解残渣として土壌有機物となって蓄積する。また、枯死木は分解に時間を要することから多くの生物の生息場所となり、森林の生物多様性に貢献する。特に、樹木の実生が倒木上に芽生えて生育し、次世代の森林を形成するプロセスは倒木更新と呼ばれ、世界中の森林で見られる更新様式だが、北方林を構成するトウヒ属樹種では特に顕著である。北方林は広大だが低緯度地域に比べ生物の多様性が低いため、分解者群集のわずかな違いが分解機能の大きな違いをもたらし、環境の変化に脆弱である可能性がある。このように、北方林における枯死木の分解過程とその制御要因の理解は、北方林の持続性や炭素収支と、それが将来の温暖化にどうフィードバックするかを予測する上で非常に重要である。 本研究では、北半球の広大な北方林全域を対象として、枯死木の分解と森林の更新に関わる菌類群集の環境応答を明らかにすることにより、気候変動が北方林の分布や炭素収支に与える影響を予測することを目指している。野外調査・分析から得られたパターンを室内培養実験およびモデリングと組み合わせることで、気候の変化が枯死木の菌類群集を変化させ、それが枯死木の分解パターンや枯死木上の樹木実生更新に影響するメカニズムと因果関係を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスのパンデミックによって海外での野外調査を始めるタイミングが当初の計画よりも大幅に遅れた。さらにロシアによるウクライナ侵攻の影響で、ロシアでの野外調査を断念せざるを得ない状況となっている。ユーラシア大陸における経度に沿った環境勾配の影響の検出を諦め、北米大陸の緯度に沿った環境勾配の影響の検出にテーマ設定を変更し、2022年度は米国ミネソタ州での野外調査を行った。2023年度にはアラスカ州での調査を予定しているほか、他の調査地の選定を現在行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度にはアラスカ州での調査を予定しているほか、カナダの西岸に広く分布するシトカトウヒの枯死木分解を緯度で比較することを主要なテーマとすることとし、調査地の選定を現在行っているところである。今後は、選定した調査地において枯死木のサンプリングと倒木上の実生調査を行い、化学分析とDNA分析によって枯死木の腐朽と菌類群集の対応関係をつけることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのパンデミックによって海外での野外調査を始めるタイミングが当初の計画よりも大幅に遅れており、さらにロシアによるウクライナ侵攻の影響で、ロシアでの野外調査を断念せざるを得ない状況となっている。ユーラシア大陸における経度に沿った環境勾配の影響の検出を諦め、北米大陸の緯度に沿った環境勾配の影響の検出にテーマ設定を変更し、2022年度は米国ミネソタ州での野外調査を行ったほか、2023年度にはアラスカ州での調査を予定し、他の調査地の選定を現在行っているところであるため、これらの調査旅費・サンプルの分析に必要な物品費・サンプル処理に必要な実験補助員の人件費としての支出を予定している。
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