研究課題/領域番号 |
20KK0141
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小池 一彦 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (30265722)
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研究分担者 |
小原 静夏 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (10878276)
作野 裕司 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (20332801)
豊川 雅哉 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (60371837)
劉 文 京都大学, 地球環境学堂, 特定助教 (60839900)
圦本 達也 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (90372002)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | ミャンマー / カキ / カキ養殖 / セルラーゼ / GCOM-C |
研究実績の概要 |
ミャンマーのクーデターおよびコロナウィルス感染症拡大のために,当初予定していた令和2年度中の渡航はできなかった。その代わり,ミエックで過去に採集(2019-2020年)されたカキ類のDNA抽出と配列解析(16S rDNAとCO1)を進めた結果,複数種のSaccostrea属(主にSaccostrea cucullata、Saccostrea echinata等)およびCrassostrea属(Crassostrea belcheri等)も複数種の生息が示唆された。 カキ類がセルロースを代表とした陸上植物由来有機物を餌資源として利用しているかを検討するために日本沿岸域に生息しているカキ類を対象にしてカルボキシメチルセルロース(CMC)のプレートアッセーを行うことにした。試料として福井県丹生漁港で採取したマガキ(Crassostrea gigas)を用いた。その結果,マガキはセルラーゼ活性を保持していることが明らかになった。この活性が内源性セルラーゼに由来するかを確認するために,ゲノム・遺伝子データベースからの情報収集を開始している。 マングローブ干潟から流出する水塊の季節的な濁度,クロロフィルの変化,日射量の分布を衛星から調べるため,最新の日本の衛星「GCOM-C」データ(250m解像度)を使って,ミャンマー・カダン島周辺海域の水質分布図の試作を行った。また,検証のための現地調査に備え,色彩輝度計を購入し,河川水色の観測のための予備実験を行った。このうち衛星に関係する成果の一部は,日本リモートセンシング学会で発表を行った。また,輝度計による水色解析に関連する成果の一部は国際誌に論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルス感染症拡大に加え,軍事クーデター勃発により,ほぼ全ての機能が麻痺し,いまだに現地渡航が実現できない。現地協力大学のミエック大学とは定期的に連絡を取り合い,令和3年度からは同大学の若手講師を広島大学の博士後期学生として迎え入れることとしているが,出国が実現するかは不透明である。
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今後の研究の推進方策 |
本科研費の性格上,現地への渡航が必須であることは承知しているが,渡航がいつ実現するかは見通せない状況である。計画通り令和3年度12月に渡航が実現することを祈っている。 ミャンマー状勢を考慮して,カキ類が生息する代替試験地について情報を収集している。マレーシア水産研究所の関係者らから聴取した情報によると,マレーシアのケダ州南部にメルボック川があり,その河口域にはマングローブ林が発達し、Crassostrea belcheriやCrassostrea iredaleiが生息し,それらのカキ養殖も実施されていることが分かった。同海域はミエックから約800 km 南下するが,アンダマン海と繋がっており,マングローブ汽水域となるミエックの代替試験として有望と考えられる。 ミャンマーへの渡航が叶うまでは沖縄・石垣島を含め各地の干潟に生息するカキを対象に安定同位体比の分析を行い,食性の違いと周辺の餌料環境の関連性について調査する予定である。渡航せずともある程度の解析が可能な衛星データの活用は引き続き進める。現地での検証作業は非常に難しいが,GCOM-Cの水質・日射,GSMaPの雨量,ひまわり反射率などのプロダクトを使って,ミャンマーのマングローブ干潟域の水質マッピングアルゴリズムを構築し,その分布特性について解析を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ミャンマーでのコロナウィルス感染症拡大と軍事クーデターにより,予定していた令和2年度中の渡航が出来なかった。令和3年度は12月に渡航を計画しているが,今後の現地調査結果との比較のために,同じようにマングローブ林を有する沖縄県石垣島での調査を計画している。差額はこの調査にも用いる予定である。
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