研究課題
メコン川流域では従来から淡水フグ食による中毒事故が頻発しているため、その抑止は流域住民の生命と健康を守るために必要である。本研究では、カンボジア領内のメコン川流域、クラチエ州において、淡水フグ食中毒を効果的に抑止し、新たな生業として安全・安心な淡水フグ養殖を確立することを目的とする。具体的には1) 淡水フグの毒性変化の実態解明、2) 食物連鎖を通じた淡水フグの毒化機構解明、3) 淡水フグ食のメンタリティー解明、および 4) 食用に向けた無毒化淡水フグ養殖の試行、の4つの課題に取り組むことを目指している。課題1については、事前に現地調査で得られた2種類の淡水フグ(Pao属)について毒性解析を行い、サキシトキシンを主成分とする神経毒を保有することが示された。一方の種類では各組織の毒濃度はいずれもきわめて高く、国際的な規制値を遥かに上回ったのに対し、他方のフグでは、皮の毒濃度のみ高かった。このサキシトキシン蓄積能の差異を生み出す原因の1つとして、サキシトキシン結合タンパク質の変異が関与する可能性が示唆された。また、課題3について、クラチエ近郊の農漁村において、フグを含むメコン川流域の淡水魚を対象とする喫食の頻度や時期、調理方法、喫食理由に関する意識調査を現地のカウンターパートに依頼して、実施したところである。今後、フグ毒性に対する認識などが、各コミュニティ内における社会経済的な属性との関連を明らかにすることを目指し、解析を進める。
4: 遅れている
日本およびカンボジアにおけるコロナウィルス感染症拡大の影響により、年度内に渡航して現地調査を行う計画はすべて延期されたことが最大の理由である。
コロナウィルス感染に効果のあるワクチン接種を出来るだけ速やかに行い、現地調査を実施する。
新型コロナウィルス感染拡大のため、渡航による現地調査を行うことができなくなったため。今年度中にワクチン接種を済ませ、現地調査を行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Toxins
巻: 12 ページ: 689, 703
10.3390/toxins12110689