研究実績の概要 |
M. chilensisの内部に生育する内生細菌のPGP特性評価試験を行った結果、複数の分離細菌が高耐塩性、IAA生産能、リン酸可溶化能を示したが、シデロフォア生産能を持つ細菌は確認できなかった。分離した内生細菌の中で、R14,R20株は高いIAA生産能を示し、同時に高いリン酸可溶化能を有していた。次いで、ポット試験を実施したところ、細菌接種区では、細菌非接種区と比較して成長比率が高い傾向にあり、全ての細菌接種区で細菌非接種区の成長比率を上回っていた。しかし、いずれの処理区においても有意な差が見られるほどではなかった。また、リン酸可溶化能とIAA生産能を示したR14,R20株を接種したM. chilensisでは、根の乾燥重量が重い傾向にあり、R14,R20株の接種によって根の生育が促進された可能性が示唆された。根におけるNa含有量を算出した結果、R14株を接種したポットにおいてNa含有量が最も多かった。シークエンス解析により、R14株はBrevundimonas diminutaと同定された。つまり、B.diminuta はIAA生産能とリン酸可溶化能といった植物生育促進因子を示し、M. chilensisの生育を促進する傾向が見られた。さらに、B.diminutaは高塩濃度下でも生育可能な耐塩性を併せ持っており、M. chilensisを用いた塩類集積土壌のファイトレメディエーションを行う際の内生菌接種剤として有望であるといえる。一方で、M. chilensisを用いた吸塩量推定モデルの構築を試みたところ、土壌塩濃度に応じた蒸散量の低下や吸塩係数の低下を考慮する必要性が示され、植物成長-吸塩モデルを用いて吸塩量を推定する際に、50および100 mmol kg-1のような土壌塩濃度においては蒸散量と成長量を正確に推定できないと吸塩量を過小評価することが示された。
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