研究課題
本研究では,嫌気性堆肥と好気性堆肥の機能性および環境負荷を比較することで,嫌気性堆肥の利点と欠点を明らかにし,両堆肥の特性を活かしたバイオマス活用堆肥を提案する.本年度はベトナムに合計4回(6月,9月,12月,3月)渡航し,現地調査および研究成果発表会を行った.また,嫌気・好気条件の異なる堆肥をフエ大学内で作成し,両堆肥の特性を比較した.フエ市内で自家堆肥を作成している農家を調査したところ,嫌気状態で堆肥化を開始するものの,低頻度ではあるが切り返しを行うなど,堆肥化後半は半好気的に管理される場合が多かった.また.ベトナム堆肥は労力がかからない反面,好気性堆肥の倍程度の堆肥化期間が必要であった.フエ大学バイオテクノロジー研究所内における堆肥化試験では,嫌気性堆肥はN2O排出量が少ない反面,CH4排出量が多いがことがわかった.特に,堆肥化期間初期に深い位置でCH4生成量が多かった.堆肥中の大腸菌は,好気性堆肥では2〜4週間,嫌気性堆肥では4週間で検出限界以下になった.サルモネラ菌についても同様に,好気性堆肥では4週間,嫌気性堆肥では8〜12週間で不検出となった.室内培養試験を実施したところ,ベトナム嫌気性堆肥を施用した土壌では,堆肥化期間が長いほどCO2およびCH4排出量は減少したが,N2Oは増加した.後者はCN比が低いことに起因すると推察された.堆肥化過程のサンプル(嫌気性と好気性)とベトナムの現地堆肥の細菌群集構造を調べたところ,嫌気性堆肥は熟成に時間を要するものの長期間(例えば6か月)の堆肥化で好気性堆肥あるいは現地堆肥の細菌叢に収束することがわかった.以上,ベトナム堆肥は完全な嫌気状態で作成されるわけでないがCH4排出量が多いこと,最終産物の衛生細菌数は不検出となり、好気性堆肥と大きな違いがないことなどを明らかにした.
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 11件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
現代農業
巻: 103 ページ: 110-115
https://www.okayama-u.ac.jp/user/TEMRE/section/soilmgt/lithosphere.html