研究課題
土地利用条件(慣行農法、アグロフォレストリーを含む不耕起農法)の違いによる土壌炭素蓄積量、有機物分解速度を比較した。インドネシアでは、ボゴール農科大学のArief Hartono氏とともに土地利用変化による土壌炭素蓄積量に対するアグロフォレストリーの効果を検証し、東カリマンタン州では油やし農園で土壌炭素量が低下すること、東ジャワ州、東カリマンタン州ではアグロフォレストリーによって土壌炭素量が増加することを解明した。ただし、東ジャワ州ではスメル火山の噴火によって継続調査が困難となった。タイ北部においても土地利用変化の影響を炭素安定同位体比を用いて調査し、トウモロコシの連続耕作によって陸稲栽培よりも土壌炭素蓄積量が減少すること、有用樹種(天然ゴム)の植栽を含む森林休閑によって土壌炭素蓄積量が回復することを解明し、Plant and Soil誌で発表した。国内では埋没腐植の分解抵抗性に対する土地利用変化の影響を解明するため、栃木県日光市の森林・ネギ畑において埋没腐植層の転耕(表土化)による有機物分解速度の変動を放射性炭素分析によって調査した。この結果、表土化によって埋没腐植層の分解速度が加速することが示され、土壌有機物の安定性の高いとされる黒ぼく土であっても深耕には炭素隔離の点からリスクがあることが示された。今後は、水田・転作畑における土壌有機物量の変動を解析するとともに、インドネシア、米国の研究者らと協力し、グローバルデータセットを用いた解析も実施することで、アジアにおける土壌炭素貯留効果に対する不耕起栽培の有効性を比較・検証する。
2: おおむね順調に進展している
海外の研究者とはオンライン会議あるいはメールを通して情報交換を行い、埋没腐植層の転耕(表土化)による有機物分解速度の変動を放射性炭素分析によって解明することに成功した。タイのトウモロコシ栽培畑で耕起によって土壌有機物は急激に減少することを解明し、Plant and Soil誌で発表することができた。また、インドネシアではアグロフォレストリーによって土壌の炭素貯留効果が高まることを解明した国際共同研究の成果を日本土壌肥料学会で発表することができた。これらの点を考慮し、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
水田・転作畑における土壌有機物量、同位体比の変動を解析することで水田利用が土壌有機炭素の安定性に及ぼす影響を解明する。さらに、インドネシア、米国の研究者らと協力し、土壌有機炭素の代謝回転速度についてデータを収集し、グローバルデータセットを用いた解析も実施することで、アジアにおける土壌炭素貯留効果に対する不耕起栽培の有効性を比較・検証する。
計画していた国外調査(インドネシア、米国)がコロナ禍によって延期となったため、予算の一部を次年度に繰り越した。コロナ禍の収束し次第、国外調査でき るように実験準備を整えると同時に、オンライン会議および遠隔操作で実施できる実験内容に次年度以降の予算を投入できるように計画している。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
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