研究課題/領域番号 |
20KK0152
|
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
西川 義文 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (90431395)
|
研究分担者 |
渡邉 謙一 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (10761702)
二瓶 浩一 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (40373344)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
キーワード | 原虫 / トキソプラズマ / ワクチン / モンゴル |
研究実績の概要 |
ワクチン抗原TgGRA7, TgGRA14, TgGRA15について、ビタミンEと脂質ナノ粒子を使用したDNAワクチンを作製した。トキソプラズマ感染マウスモデルで3種混合ワクチンとすることで感染防御効果が有意に上昇したため、次に3種混合DNAワクチン接種の条件でマウスの免疫反応を解析した。ワクチン接種によるTgGRA7抗体の産生は認められなかったが、TgGRA14抗体とTgGRA15抗体の産生(IgG1とIgG2)を確認した。3種混合DNAワクチン接種マウス由来の脾臓細胞は原虫抗原の刺激により増殖し、炎症性サイトカインのIFN-gと抗炎症性サイトカインのIL-4およびIL-10を産生した。従って、3種混合DNAワクチンが誘導する防御免疫応答には、上記の免疫反応が関与していることが示された。 さらに、TgGRA15の組換えタンパク質の単独接種においても、トキソプラズマ感染マウスモデルでマウスの生存率の上昇と脳内原虫数の減少が確認され、感染防御効果が認められた。TgGRA15組換えタンパク質をマクロファージに作用させるとIL-12の産生を誘導させ、自然免疫の活性化能が示唆された。TgGRA15組換えタンパク質接種によるTgGRA15抗体の産生(IgG1とIgG2)を確認した。TgGRA15組換えタンパク質接種マウス由来の脾臓細胞は原虫抗原およびのTgGRA15組換えタンパク質の刺激により増殖し、炎症性サイトカインのIFN-gを産生した。TgGRA15組換えタンパク質の接種は、TgGRA15欠損原虫の攻撃感染に対しては効果がなかったため、TgGRA15依存的な免疫反応が感染防御免疫に重要な役割を果たしていることが示唆された。 また、モンゴルの獣医学研究所にて、ヒツジを用いたトキソプラズマ感染実験および3種混合DNAワクチン接種実験を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、マウスの実験モデルでワクチン用抗原の免疫活性化能の解析とモンゴル獣医学研究所の大型動物感染施設において小型反芻獣を用いた抗原免疫実験を計画していた。 ワクチン抗原TgGRA7, TgGRA14, TgGRA15について、ビタミンEと脂質ナノ粒子を使用したDNAワクチンを作製した。トキソプラズマ感染マウスモデルで3種混合ワクチンとすることで感染防御効果が有意に上昇したため、次に3種混合DNAワクチン接種の条件でマウスの免疫反応を解析した。ワクチン接種によるTgGRA7抗体の産生は認められなかったが、TgGRA14抗体とTgGRA15抗体の産生(IgG1とIgG2)を確認した。3種混合DNAワクチン接種マウス由来の脾臓細胞は原虫抗原の刺激により増殖し、炎症性サイトカインのIFN-gと抗炎症性サイトカインのIL-4およびIL-10を産生した。従って、3種混合DNAワクチンが誘導する防御免疫応答には、上記の免疫反応が関与していることが示された。 さらに、TgGRA15の組換えタンパク質の単独接種においても、トキソプラズマ感染マウスモデルでマウスの生存率の上昇と脳内原虫数の減少が確認され、感染防御効果が認められた。TgGRA15組換えタンパク質の接種により、自然免疫の活性化能、TgGRA15抗体の産生(IgG1とIgG2)、抗原特異的な脾臓細胞の活性化が確認された。TgGRA15組換えタンパク質の接種は、TgGRA15欠損原虫の攻撃感染に対しては効果がなかったため、TgGRA15依存的な免疫反応が感染防御免疫に重要な役割を果たしていることが示唆された。 また、モンゴルの獣医学研究所にて、ヒツジを用いたトキソプラズマ感染実験および3種混合DNAワクチン接種実験を開始した。 以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は以下の研究課題を実施する。 【小型反芻獣におけるワクチン効果の検証】モンゴル獣医学研究所の大型動物感染施設にて、前年度の小型反芻獣の免疫実験で得られた結果をもとにワクチン接種プロトコルを作成する。免疫終了後に交配し、攻撃試験を実施する(ワクチン接種群:5頭、ワクチン未接種群:5頭)。経時的に血液を採材し、血液生化学検査、血球細胞と抗体産生の解析、病理解剖による組織学的解析を行い、安全性と免疫誘導能を検証し、総合的にワクチン効果を判定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
モンゴル獣医学研究所の大型動物感染施設において小型反芻獣の感染実験を開始したが、解剖後に各組織の病理組織学的、免疫組織化学的解析が完了していない。今年度はこれら解析用の経費として研究費を使用する予定である。
|