研究課題/領域番号 |
20KK0158
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
志見 剛 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (60817568)
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研究分担者 |
河野 洋平 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (20831697)
木村 宏 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30241392)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 核ラミナ / ラミン / 核膜孔複合体 / ヌクレオポリン / BAF / cGAS |
研究実績の概要 |
動物細胞の核では、核膜の内側を裏打ちする核ラミナは核構造を維持し、核膜を貫通する核膜孔複合体は核-細胞質間における高分子の輸送を調節する。核ラミナと核膜孔複合体の構造を保つことは、ゲノムDNAの機能を制御するために必須である。核ラミナの主要な構造タンパク質であるラミンは、タイプV中間径フィラメントタンパク質の一種であり、A型ラミン(ラミンA, ラミンC)とB型ラミン(ラミンB1, ラミンB2)によって構成される。ラミンの遺伝子の変異は、遺伝的疾患であるラミノパチーを発症する。 我々は、クライオ電子顕微鏡トモグラフィー法(cryo-ET)とコンピュータービジョンと組み合わせた三次元構造化照明顕微鏡法(3D-SIM)を行い、胚線維芽細胞(MEF)において四量体を形成したラミン分子が繋がって直径約3.5ナノメートルのラミンフィラメントを形成すること、これらのラミンフィラメントが不均一に分布することによって厚み約14ナノメートルの核ラミナの網目構造を取ることを明らかにした。一方で、核膜孔複合体は直径約120ナノメートルの筒状構造をとり、約30種類のヌクレオポリンから構成される。核膜孔複合体が核ラミナの網目構造の穴に1つずつ挿入されている。我々は、ヌクレオポリンの一つであるELYSと結合して核膜孔複合体の分布を制御することを見出した。 近年、一部のラミノパチーにおいて核膜が破損することが報告されたが、破損した核膜を修復する分子メカニズムについては不明な点が多い。本研究課題では、核膜の破損部において核ラミナと核膜孔複合体が再構築する分子メカニズムを解明するために、コンピュータービジョンと組み合わせた3D-SIMに関してノースウエスタン大学(米国)のRobert D. Goldman博士と、cryo-ETに関してチューリッヒ大学(スイス)のOhad Medalia博士と共同研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核膜の一部が破損するとゲノムDNAが核から突出して損傷を受ける。損傷したゲノムDNAが修復されると同時にcGAS-STINGによるDNAセンサーが活性化し、BAF(Barrier-to-autointegration factor)とESCRT-III複合体(endosomal sorting complex required for transport-III)が核膜の成分を運び込んで核膜の破損部を修復する。 我々は、すべてのラミン(ラミンA, ラミンB1, ラミンB2, ラミンC)の中で、ラミンCだけが核膜の破損部に迅速に集積することを見出した。ラミンCが核膜の破損部に局在するためには、Ig-foldドメイン内を介したBAFとの結合とNLSによる核移行が必要であることが判明した。さらに、ラミンA/Cが欠損すると、核膜の破損部へのBAFの集積とcGASによる核DNAの感知がともに顕著に低下することが確認された。これらの研究成果は、申請者が責任著者となった研究論文として現在投稿中である(Kono et al., bioRxiv. doi.org/10.1101/2022.01.05.475028 )。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、メカニカルストレスを受容する核ラミナと核膜孔複合体の分子構造と分子ダイナミクスを調べるために最適化した細胞シート系を樹立する。まず、CRISPR/Cas9によって心筋症または筋ジストロフィーの症状を伴うA型ラミン遺伝子のラミノパチー変異を導入したノックインマウスES細胞株およびMEF細胞を作製し、心筋細胞または筋管細胞へ分化誘導を行う。次に、細胞集団に与えるメカニカルストレスを正確にコントロールするために、ナノファイバーと組み合わせた配向制御細胞培養技術によってこれらの分化した細胞の配向と密度が均一な細胞シートを作製する。さらに、アガロースで作成した板状の弾性ゲルをマイクロマニピュレーターで保持し、培養皿に敷いた細胞シートを上部から加圧する。最終的には、cryo-ETやコンピュータービジョンと組み合わせた3D-SIMを用いて、加圧した細胞シート内で細胞の核膜の破損部に再構築される核ラミナと核膜孔複合体の構造を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、研究計画を立案した当初では想定していなかったコロナウイルス感染の拡大によって、国際共同研究を目的とした米国とスイスでの滞在が困難となったために、代表者が両国に長期滞在し実験を行うための経費が使用されなかった。次年度使用額によって、代表者が両国に長期滞在すると同時に、国内では代表者の代わりに継続して実験を行う人材を雇用する。
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