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2023 年度 実施状況報告書

細胞シート工学を用いたラミノパチー疾患モデル構築と核ラミナ修復機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20KK0158
研究機関金沢大学

研究代表者

志見 剛  金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任准教授 (60817568)

研究分担者 河野 洋平  東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (20831697) [辞退]
宮澤 佳甫  金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (40845525)
木村 宏  東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30241392)
研究期間 (年度) 2020-10-27 – 2025-03-31
キーワード核ラミナ / ラミン / 核膜孔複合体 / ヌクレオポリン / BAF / cGAS
研究実績の概要

動物細胞の核では、核膜の内側を裏打ちする核ラミナは核構造を維持し、核膜を貫通する核膜孔複合体は核-細胞質間における高分子の輸送を調節する。核ラミナと核膜孔複合体の構造を保つことは、ゲノムDNAの機能を制御するために必須である。核ラミナの主要な構造タンパク質であるラミンは、タイプV中間径フィラメントタンパク質の一種であり、A型ラミン(ラミンA, ラミンC)とB型ラミン(ラミンB1, ラミンB2)によって構成される。ラミンの遺伝子の変異は、遺伝的疾患であるラミノパチーを発症する。
近年、一部のラミノパチー変異によって核膜が破損することが報告された。我々は、すべてのラミンの中で、ラミンCだけが核膜の破損部に迅速に集積することを見出した。また、ラミンCが核膜の破損部に集積するためには、Ig-foldドメイン内を介したBAFとの結合が必要であることから、Ig-foldドメイン内のラミノパチー変異によってラミンCが集積しにくくなることが判明した。さらに、ラミンA/Cが欠損すると、核膜の破損部へのBAFの集積とcGASによる核DNAの感知がともに顕著に低下することが確認された。
本研究課題では、ラミノパチー核膜の破損部において核ラミナが再構築する分子メカニズムを解明するために、コンピュータービジョンと組み合わせた3D-SIMに関してノースウエスタン大学(米国)のRobert D. Goldman博士と、cryo-ETに関してチューリッヒ大学(スイス)のOhad Medalia博士と共同研究を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ラミンAは、ラミンCとは異なり前駆体のC末端に位置するCAAXボックスが翻訳後修飾の一つであるファルネシル化を受けると脂質親和性を持つ。さらに、ラミンAの前駆体(pre-LA)では、ファルネシル化を受けたCAAXボックスを含む領域が切断されて成熟体になる。ラミンAの変異体であるプロジェリンの発現は、ハッチンソン-ギルフォードプロジェリア症候群(HGPS)を引き起こす。プロジェリンは、スプライシング異常によって切断サイトが欠失しているので、CAAXボックスがファルネシル化を受けると核膜内膜の脂質二重膜に挿入されたままとなる。HGPSモデルのMEFでは、ラミンAとプロジェリンは核膜の破損部への集積が遅いことを見出した。さらに、ラミンAは、ラミンCには存在しないテールドメイン内に存在する特定の領域を介して核ラミナと強く結合し、核質に拡散する成分が著しく減少して、核膜の破損部への集積も低下することが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

ラミンCのrodドメインのC末端側に位置するACN(328-398)サイトは、同ドメインのN末端側と弱く相互作用して、液―液相分離(LLPS)を引き起こす可能性が示唆されている。そこで、ラミンCはACNサイトを介してLLPSを引き起こしてプラーク構造を形成し、次第にラミンフィラメントや核ラミナの網目構造に再構築される可能性がある。申請者の予備的実験結果によれば、細胞周期の間期において、ラミンCの392番目のセリンはリン酸化を受けることから、LC S392AとLCS392Dの核膜の破損部への集積を調べたところ、LC WTと比較してこれらの変異体の集積が著しく低下したことから、ラミンCが核膜の破損部に局在するためには、S392のリン酸化の有無に関係なくACNサイトの正しい配列が必要であると考えられる。今後は、rodドメインのN末端側とACNサイトをリコンビナント精製し、両者の相互作用によって濃度依存的にLLPS を引き起こす可能性を調べる。さらに、CRISPR/Cas9システムを利用して、ACNサイトが欠損した内在性のラミンA/Cを発現するMEFを作製する。これらのMEFに核膜の破損マーカーとして赤色蛍光タンパク質であるsfCherryと融合したNLS(NLS-sfCherry)を発現させて、グリッド付きのガラスボトムディッシュに播種する。マイクロレーザー照射によってこれらの細胞の核膜を破損させてから10分間隔で30分後まで固定してcryo-ETを行う。続いて、同一のサンプルをラミンCに対する特異的抗体を使用して免疫染色して3D-SIMを行う。取得した3D-SIMとcryo-ETの画像データをコンピューター解析によって相関させて電子-光相関顕微鏡法(reverse CLEM)を行い、核膜の破損部に集積するラミンC分子の空間的配置・配向を決定する。

次年度使用額が生じた理由

当該年度では、研究計画を立案した当初に想定していたよりも国内での研究が進展したので、国際共同研究を目的とした米国とスイスでの滞在を延期して、論文の投稿準備を行った。次年度使用額によって、代表者が両国に長期滞在すると同時に、国内では代表者の代わりに継続して実験を行う人材を雇用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件) 学会発表 (2件)

  • [国際共同研究] Northwestern University/Feinberg School of Medicine/Dept. of Cell & Developmental Biology(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Northwestern University/Feinberg School of Medicine/Dept. of Cell & Developmental Biology
  • [国際共同研究] Queen Mary University of London/William Harvey Research Institute/Faculty of Medicine and Dentistry(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Queen Mary University of London/William Harvey Research Institute/Faculty of Medicine and Dentistry
  • [国際共同研究] University of Zurich/Dept. of Biochemistry(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      University of Zurich/Dept. of Biochemistry
  • [国際共同研究] Asan Medical Center/Asan Institute for Life Science/Convergence Medicine Research Center,(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Asan Medical Center/Asan Institute for Life Science/Convergence Medicine Research Center,
  • [雑誌論文] Delayed localization of A-type lamins to the rupture sites in Hutchinson-Gilford progeria syndrome2023

    • 著者名/発表者名
      Kono Yohei、Pack Chan-Gi、Ichikawa Takehiko、Komatsubara Arata、Adam Stephen A.、Miyazawa Keisuke、Rolas Loic、Nourshargh Sussan、Medalia Ohad、Goldman Robert D.、Fukuma Takeshi、Kimura Hiroshi、Shimi Takeshi
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: N/A ページ: N/A

    • DOI

      10.1101/2023.09.02.555826

    • 国際共著
  • [学会発表] ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群において核ラミナの修復が遅延する分子メカニズムの解明2023

    • 著者名/発表者名
      河野 洋平、白 燦基、市川壮彦、福間 剛士、木村 宏、志見 剛
    • 学会等名
      第41回染色体ワークショッフ・第22回核タイナミクス研究会
  • [学会発表] 核膜修復におけるA型ラミンのテール領域に関する網羅的解析2023

    • 著者名/発表者名
      河野洋平、白燦基、市川壮彦、福間剛士、木村宏、志見剛
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会

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公開日: 2024-12-25  

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