研究課題/領域番号 |
20KK0162
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
諏訪 元 東京大学, 総合研究博物館, 特任教授 (50206596)
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研究分担者 |
近藤 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40244347)
佐々木 智彦 京都大学, 総合博物館, 准教授 (40826244)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 人類進化 / 古人口学 / 南アフリカ |
研究実績の概要 |
本研究では、海外共同研究者との研究協力体制のもとに南アフリカの研究資料を加え、1)足骨の機能形態解析により、直立2足歩行適応の進化について明らかにし、2)歯牙の経年変化解析により、現代人的な人口学特性の進化的深さについて検証することを目的としている。南アフリカにおける研究資料調査に先立ち、2020年度中に以下研究を実施した。足骨の進化的研究として、海外共同研究者から提供されたアウストラロピテクス・セディバの距骨と踵骨の3次元デジタルモデルを用い、特に主要関節面の向きに着目した機能解析を進めた。その過程で、距骨滑車関節面が、主として一軸的な関節運動に対応する領域と、背屈位における安定性と直接関わる領域に分かれることが判明し、この解釈の妥当性を現生ニホンザルの遺体標本データなどを用いて検証を進めた。今後は、これらの所見を踏まえて解析結果をまとめる。古人口学的研究としては、犬歯歯髄空形状の3次元解析体制を確立し、現代日本人と古人骨資料の犬歯データの整理を進めた。また、初期人類の歯牙資料をより的確に評価するために犬歯の性差と性別に関わる研究を進めた。また、臼歯咬耗を古人口学的に応用するための基礎研究として、日本の古人骨資料(縄文時代姥山遺跡)の歯列ごとの臼歯咬耗状態についてマイクロCT調査を進め、リベン遺跡の未咬耗臼歯を用いて臼歯咬耗に伴うエネメル質消失量をモデル化するための方法論的研究を進めた。臼歯関連の研究は、咬耗状態から人口学的解析に必要な相対経年情報を抽出するための研究であり、南アフリカ資料に応用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
足骨研究では、南アフリカの重要なアウストラロピテクス化石、200万年前のアウストラロピテクス・セディバの距骨と踵骨の3次元デジタルモデルを用い、両骨の位置関係を含む機能形態解析を進め、東アフリカの化石と現生霊長類資料と比較解析することで、いくつかの新らたな視点を得ることできた。さらには現生霊長類の遺体資料を用い、距腿関節と距骨下関節の実際の運動軸と関節面形態の対応について計測し、化石足骨の機能解釈の妥当性を検証した。古人口学的研究では、分担者の研究体制を向上すると共に、分担者と代表者間の共同体制を確立し、臼歯咬耗とエナメル質消失量のモデル化に関する研究について十分な進展を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
足骨研究については、昨年度遂行した滑車面形態軸を用いた解析を含む距腿関節を基準とした機能解釈を総合的にまとめ、アウストラロピテクス・セディバの直立2足歩行機能について検証する。古人口学的研究については、昨年度のエナメル質咬耗量推定のモデル化をさらに進めると共に、縄文時代古人骨を用いた実際の先史集団への応用研究を開始する。また、犬歯歯髄空の経年変化による年齢情報と臼歯の咬耗量に基づく相対年齢評価の相互対応について調査を開始する。前者に関しては一定の成果実績を有しているため、後者の方法論確立に資することと、双方を併用する可能性について検討する。また、可能な限り、年度内に南アフリカを訪問し、現地調査の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には、研究の全体計画を確認すると共に国内における分担者間の研究体制を整えたが、当初目標を十分に達成することができた。中でも、ソフト購入を含むコンピュタ解析体制を分担者研究室に効率良く確立することができ、また国内旅費を予定より節約することができた。そのため、2021年度に国内における足骨研究と古人口学研究それぞれに必要な資料整理、データ取得、分担者同士の研究打ち合わせなどに効果的に使用する。また、南アフリカへの資料調査の詳細企画については年度中に適宜調整する必要があり、関連した予算執行についても検討する。
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