研究課題/領域番号 |
20KK0163
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 拓哉 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30456743)
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研究分担者 |
小関 右介 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (00513772)
勝村 啓史 北里大学, 医学部, 准教授 (10649544)
立木 佑弥 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (40741799)
武島 弘彦 東海大学, 海洋学部, 特定研究員 (50573086)
秋田 鉄也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 研究員 (60625507)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | カワマス / ポートフォリオ効果 / 家系分析 / 森林-河川生態系 / 生息地の連続性 |
研究実績の概要 |
常に変動する自然環境において、生物集団がどのような仕組みで絶滅を免れ、安定的に維持されているのかを理解することは、生態学の主要課題の一つである。またその解決は、有限な生物資源の持続的利用の鍵となる。近年、多様な生活史をもつ個体の存在が集団全体の個体数の変動を安定化するという「ポートフォリオ効果注」に注目が集まっている。しかし、多様な環境(景観)のどのような要素が、個体の生活史多様性を生み出し、集団レベルの安定化をもたらすのかという、ポートフォリオ効果が成立する仕組みの全体像は、いまだ明らかになっていない。本研究では、自然景観の主要な要素である「生態系の連環」と「生息地の連続性」が、個体の生活史多様性を生み出し、ポートフォリオ効果を創発するという仮説の検証を進めている。原生的な自然景観が残る北アメリカの河川流域において、20年以上継続されている大規模かつ詳細なカワマス(サケ科イワナ属)の個体群モニタリングに、日本側研究者が参画し、各々の専門分野を補完しあう異分野融合の国際共同研究を展開することを計画している。この課題に関して、本年度は新型コロナ禍で渡航が困難であったために、オンラインで米側研究者と研究打ち合わせを行い、過去20年間に取得済みの標識採捕データの予備解析を進めた。また、米側研究者が既取得のRAD-seqデータを申請代表者の研究室で解析し、調査対象流域のカワマスの遺伝的集団構造を明らかにするとともに、ゲノムワイドSNPに基づく家系分析(予備)を行った。さらに、カワマスのゲノムが現時点でないことから、先進ゲノム支援の新規ゲノム解読に応募・採択された。米側研究者から良質なゲノムDNAを取得するためのサンプルを郵送してもらい、先進ゲノム支援のプラットフォームで現在ゲノムシーケンスを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ禍において、アメリカへの渡航を伴う研究パートは遅れているが、継続してオンライン会議を行うことで、米側研究者がすでに取得済みの個体群データとゲノムデータを日本側で解析するという当初の目的は順調に進められいる。さらに、本年度は先進ゲノムの新規ゲノム支援に採択されたことで、カワマスのゲノム解読を追加で進めることができている。 以上のことから、本事業は国際共同研究強化Bの目的と当初計画に基づくと、「やや遅れている」と評価するものの、現状ではベストに近い形で進捗をしている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染状況を見極めながらであるが、少人数でも渡米して実地調査を行うことを検討している。 また、カワマスのゲノム解読、RAD-seqデータの予備解析に基づいて、追加のゲノムワイドSNPを効率よく取得するためのSNPパネルの作成、および多検体の分析に進む予定である。 個体群データについては、個体の生活史を定量的に評価し、生活多様性と集団の安定性の関係に関する解析を進める予定である。
これらが進捗すれば、実地調査と合わせて、当初の計画通りの進捗にまでプロジェクトを推進できる可能性が高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の渡航が困難であったことから次年度以降の渡航を踏まえて、次年度使用額を生じることとした。
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