研究課題/領域番号 |
20KK0171
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
坂場 武史 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (80609511)
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研究分担者 |
三木 崇史 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (10598577)
坂本 寛和 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (10837397)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | シナプス |
研究実績の概要 |
本年度はベルリン自由大学のStephan Sigristとの共同研究を実施した。ラット苔状線維シナプス前終末におけるcAMP依存性伝達物質放出増強の分子細胞メカニズムを明らかにするために、電気生理学と、特に超解像光学顕微鏡を用いた研究を進めた。全反射蛍光顕微鏡を用い、脱分極に対する単離シナプス前終末へのCa流入量を調べたところ、cAMP濃度を終末内で上昇した条件下で、局所Ca流入量が増大していることがわかった。ホールセル電流から記録できる終末全体のCaチャネル電流量に変化がなかったことから、終末内へのCaチャネルの分布が変化し、伝達物質放出部位付近のCaチャネル密度が増大していることが予想された。これを支持する結果として、伝達物質放出に対するP/Q型Caチャネルの相対的な寄与が大きくなり、N型チャネルの寄与が逆に減っていることが、電気生理学的なシナプス電流測定からわかった。実際にCaチャネル密度が変化しているかどうかを調べるため、国際共同研究で超解像光学顕微鏡の一種であるSTED顕微鏡を用いてCaチャネルクラスターの大きさを実測した。Forskolinの短時間投与によって終末内のcAMP濃度上昇をさせると、放出部位付近のCaチャネルクラスターが拡大していることが観察された。一方でMunc13で標識される伝達物質放出部位の大きさは変わらなかった。また、放出部位とCaチャネルクラスターの位置関係には変化がなかった。よって、cAMP濃度上昇後、短時間で伝達物質放出部位付近のCaチャネル集積がおこることがわかった。以上の結果は、PNAS誌に論文として公刊した(Fukaya et al., 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画の半分程度を本年度に論文として公刊できたことから、このペースで進めれば想定以上に研究を進められると予想できるため。
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今後の研究の推進方策 |
cAMP依存性の可塑性メカニズムをより詳細に検討するとともに、cAMP依存性可塑性の生理的意義を検討することが重要である。現行では海外渡航が困難な状態であるが、緊密な連絡を進めながら共同研究を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航が現状で不可能であることから旅費を中心に次年度に繰り越した。渡航が可能になり次第、旅費等を中心として使いたい。現状では海外側との連絡をメール、skype, zoomなどで緊密にして、研究計画に支障がないようにしている。
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