研究課題/領域番号 |
20KK0177
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小野 大輔 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (30634224)
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研究分担者 |
池上 啓介 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10709330)
山仲 勇二郎 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20528343)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 概日リズム / 睡眠・覚醒 / 自然環境 / 生物発光 / イメージング |
研究実績の概要 |
睡眠・覚醒や体温調節など、ほぼすべての生理機能には24時間を1サイクルとする“概日リズム”が存在し、“概日時計”がその時間的調節を担う。我々の身体を構成する すべての細胞に、概日時計は備わり、時計遺伝子の転写・翻訳を介したフィードバックループがその中心的役割を示す。概日時計の中でも、中枢時計である「視交叉上核」はペースメーカーとして機能し、睡眠・覚醒のリズムを調節する。
近年の光遺伝学の技術開発により、様々な生命現象を調節する神経回路が同定されてきている。哺乳類の睡眠研究においても、実験室の飼育環境下における睡眠・覚醒調節に関わる神経細胞が同定されてきた。一方、自然界における動物の睡眠研究はほとんどなされていない。しかし、最近になって自然界における睡眠・覚醒パターンが、実験室の結果とは大きく異なる事が示唆されてきた。国際生物学賞を受賞したDr. S. Daan(故)は、自然条件下(野外)でマウスを飼育すると、夜行性から昼行性にシフトする事を発見した。本研究では、自然環境下における動物行動の調節を担う神経メカニズムの解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、自然環境下における行動調節メカニズムを明らかにするため、概日時計中枢である視交叉上核からの出力経路の探索を進め、視交叉上核から複数の神経投射先の候補領域の同定に成功した (Ono et al., 2020 Sci. Adv.)。その中でも、室傍核CRF神経の神経活動が、視交叉上核の抑制性神経伝達物質であるGABAにより調節を受けている事、さらに視床下部外側野のオレキシン神経を介し覚醒の調節がされている事を同定した。これら一連の実験の中で、生物発光を用いたカルシウムプローブ(Okiluc-CaM)の開発にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に開発した、新規生物発光カルシウムプローブを改変し、発光cAMPプローブの開発を進める。すでに予備的なデータが得られている段階で、培養細胞での機能確認を行い、アデノ随伴ウイルスベクターを用い神経初代培養系を用いて細胞内cAMPとCa2+の同時計測を試みる。さらに高輝度かつ長波長を示すプローブ開発も行う。
脳内の特定細胞に発光プローブを発現させ、急性スライスでの発現確認、その後in vivoにおける発光計測が可能かどうかを検証する。ワイヤレス光計測や非侵襲光計測のプロトタイプを作成し個体における発光計測システム開発を進める。昨年度はコロナウイルスの影響で共同研究先への渡航ができなかったが、来年度以降事態が落ち着き次第渡航の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はコロナウイルスの影響もあり、共同研究先への渡航ができなかったことから、国内で行う事の出来る実験に一部切り替えた。渡航の目途が立ち次第準備をする予定でいる。
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