研究課題
睡眠・覚醒や体温調節など、ほぼすべての生理機能には24時間を1サイクルとする “概日リズム”が存在し、“概日時計”がその時間的調節を担う。我々の身体を構成する すべての細胞に、概日時計は備わり、時計遺伝子の転写・翻訳を介したフィードバックループがその中心的役割を示す(図1)。概日時計の中でも、中枢時計である「視交叉上核」はペースメーカーとして機能し、睡眠・覚醒のリズムを調節する。近年の光遺伝学の技術開発により、様々な生命現象を調節する神経回路が同定されてきている。哺乳類の睡眠研究においても、実験室の飼育環境下における睡眠・覚醒調節に関わる神経細胞が同定されてきた。一方、自然界における動物の睡眠研究はほとんどなされていない。しかし、最近になって自然界における睡眠・覚醒パターンが、実験室の結果とは大きく異なる事が示唆されてきた。国際生物学賞を受賞したDr. S. Daan(故)は、自然条件下(野外)でマウスを飼育すると、夜行性から昼行性にシフトする事を発見した。本研究では、自然環境下における動物行動の調節を担う神経メカニズムの解明を行う。これまで開発を進めてきた、沖縄産ホタル発光タンパク質を用いた光イメージングシステムをさらに発展させ、発光cAMPプローブの開発を行った。アデノ随伴ウイルスベクターを用い神経初代培養系を用い、細胞内のcAMPおよびCa2+の同時計測を行った。その結果、概日時計中枢である視交叉上核におけるcAMPとCa2+は異なる機能を持つ事が示唆された。自然環境下における動物行動の調節メカニズムを明らかにするため、共同研究先への渡航を検討したが、今年度もコロナウイルスの影響で渡航ができなかった。一方で、ワイヤレス光計測や非侵襲光計測のプロトタイプが完成した。
2: おおむね順調に進展している
新規発光cAMPの作成に成功したこと、さらには視交叉上核における細胞内cAMPとCa2+の機能的違いが明らかにされつつある。また非侵襲光計測システムのプロトタイプが出来上がった。渡航が制限される中、自然環境を模倣した実験プトロコルの作成も並行して進めることなどを総合し順調に進展していると考える。
作成した発光cAMPプローブを用い、視交叉上核におけるcAMPの機能的意義を明らかにしていく。光計測だけでなく光操作ツールを組み合わせた実験を進め、論文にまとめる。非侵襲光計測のプロトタイプを用い、脳深部からの光計測を実施する。自然環境下における脳内神経活動計測を実施する。コロナウイルスによる渡航が難しい場合に備え、自然環境を模倣したプロトコルを実験室で再現できるシステムの構築を進める。
コロナウイルスによる渡航が制限されていたため。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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