研究課題/領域番号 |
20KK0178
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
島上 哲朗 金沢大学, 保健管理センター, 助教 (50436820)
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研究分担者 |
村居 和寿 金沢大学, 保健学系, 助教 (10828099)
善岡 克次 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (60200937)
山下 太郎 金沢大学, 医学系, 教授 (90377432)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | D型肝炎ウイルス / B型肝炎ウイルス / 肝硬変 / 肝がん |
研究実績の概要 |
1.レポーター遺伝子HiBiTを利用したリコンビナントD型肝炎ウイルス(以下HDV)の作成と抗ウイルス薬スクリーニング:前年度まで作成したHiBiTを挿入したリコンビナントD型肝炎ウイルスは、肝がん細胞株内で複製するものの、複製は一過性で、長期間の持続複製が困難だった。さらに、感染性粒子の形成に必須なB型肝炎ウイルス(以下HBV)のエンベロープ蛋白質の存在下でもリコンビナントHDV感染性粒子は産生されなかった。これらの問題点を改善するために、これまでは1倍長のHiBiT-HDV遺伝子やアンチゲノム鎖を利用してリコンビナントHDVを作成していた。今年度は、3倍長のHiBiT-HDV遺伝子を作成し、その複製能を解析したが、1倍長とほぼ同等であり、リコンビナントHDVの作成には至らなかった。 2.モンゴルにおけるヒト肝がん組織由来RNAのRNAseq解析:これまでのモンゴルとの共同研究から、HDVとHBVが共感染者の肝がん組織由来RNA、HBV単独感染者の肝がん組織由来RNAを計約50例分、すでに金沢大学へ送付を受けている。まず9例分のRNAに関してRNAseq解析を行い、HDVとHBV共感染者の肝がん組織特異的な計9個の融合遺伝子候補を抽出し、そのうち2個に関して、PCR法で実際に存在を確認できた。また追加で20例分のRNAに関してRNAseq解析を行った。 3.モンゴルにおけるヒト肝がん組織と血液の採取:モンゴルの共同研究者(モンゴル国立医科大学のDuger教授)は、モンゴルにおいて肝がんに対して手術療法を受けた患者の肝組織の残余検体からRNAを抽出し、保存している。また肝がんの手術療法をうけた患者の血液を保存すると共に、肝画像所見、腫瘍マーカーを含む血液生化学データや臨床情報の収集、予後の追跡を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HiBiTを利用したリコンビナントHDVの作成に関しては、HiBiTの挿入よりHDV複製の低下を認めており、薬剤スクリーニングに資する評価系の作成には至っていない。モンゴルのヒト肝がん組織のRNAseq解析に関しては、モンゴルから、RNAseq解析に資する高品質のRNAがモンゴルの共同研究先から予定通り送付されており、順調に研究が進んでいる。実際、RNAseq解析を行い、HBVとHDVによる肝がん特異的に認められる可能性のある融合遺伝子候補の同定に至った。本来であれば、研究代表者がモンゴルを訪問し、モンゴルにおいてHBV・HDVの培養肝細胞感染系を用いた研究基盤の確立を行う予定であった。しかし、COVID-19による渡航制限のため、モンゴル訪問ができていないため、この目的は未達成である。
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今後の研究の推進方策 |
1.レポーター遺伝子HiBiTを利用したリコンビナントHDVの改良:これまでの解析から1倍長のHiBiT-HDVゲノムは、遺伝子導入後少なくとも5日後までは、肝がん細胞株中で複製し、細胞上清中のHiBiT活性により複製をモニタリングできることがわかった。今年度は、HBVのエンベロープ蛋白質発現の条件を最適化し、再感染可能なリコンビナントHDVの産生をめざす。また作成するコンビナントHDVを用いて、FDA承認薬ライブラリーを用いた抗ウイルス効果のスクリーニングを行う。 2.モンゴルにおけるヒト肝がん組織由来RNAのRNAseq解析:これまでの解析から同定したHBVとHDV共感染者の肝がん組織特異的に認めた複数の融合遺伝子に関して、それぞれ、培養細胞過剰発現用ベクターにクローニングする。さらにこの融合遺伝子発現ベクターを培養細胞に遺伝子導入し、機能解析を行う。機能解析として、形質転換能、細胞増殖能、コロニー形成能、腫瘍形成能、抗がん剤感受性、血管新生能を評価する。また、令和4年度実施した20名分のRNAseqの結果を融合遺伝子の観点から解析する。 3.モンゴルにおけるヒト肝がん組織と血液の採取:引き続きモンゴルにおいてヒト肝がん組織由来RNAの抽出と保存、血液の保存および臨床データの収集を行う。今年度は、COVID-19による渡航制限は大幅に緩和されると思われ、これまで実施できなかった研究代表者のモンゴル訪問によるモンゴルにおける研究基盤の確立を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本側研究者のモンゴル訪問を予定していたが、COVID-19パンデミックによる渡航制限のため、訪問できなかったため、繰越金が発生した。今年度は、渡航制限の緩和が見込まれるため、繰越金を利用してモンゴルを訪問する。また、モンゴルから送付されたにも関わらずRNAseq解析を行っていない検体が存在する。繰越金を用いてこれらの未解析の検体の解析を進める。
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