研究課題/領域番号 |
20KK0183
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
飯田 哲也 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (90221746)
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研究分担者 |
沖 大也 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (30845285)
河原 一樹 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (60585058)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2023-03-31
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キーワード | 腸管病原体 / コレラ / 下痢症 / 次世代シーケンサー |
研究実績の概要 |
近年、発展途上国では、安全な水の入手、十分な衛生環境などの環境条件が改善されつつあるにもかかわらず、コレラは依然として世界的な脅威であり、インドはこの感染症の影響を受ける主要な国の一つである。最近の報告では、コレラの「ホットスポット」がインド国中に複数存在することが確認されており、世界的な輸送システムの発達と相まって、インドだけでなく他の国での将来のパンデミックの発生にも潜在的なリスクをもたらす可能性があることから、コレラの分子疫学に関する包括的な研究が急務となっている。本研究では、インド国立コレラ・腸管感染症研究所(NICED)と共同で、インド国内のホットスポットを中心に、アウトブレークが生じた各地域からコレラ菌の臨床・環境株を収集し、疫学調査およびゲノム解析を実施することで、コレラ菌の病原性発現の要となる宿主への付着・定着機構の解明に役立てる。コレラ菌の付着機構の理解に基づき設計される付着阻害剤は、耐性菌を生み出さない新規のコレラ対策であり、抗生物質やワクチンによる治療が難しい乳幼児や高齢者も対象とした有望な治療法としてコレラ撲滅に大きく寄与することが期待される。
令和3年度は、コレラ発症者の糞便試料から単離培養したコレラ菌株を使用し、次世代シーケンサーによる全ゲノムシーケンスを実施した。解析の結果、O1血清型、O139血清型のコレラ菌20株の全ゲノムの解読に成功した。詳細は現在解析中であるが、病原性発現に関与すると予想される複数の腸管定着因子及び毒素の遺伝子の存在を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度も新型コロナウイルスの感染拡大のため、インドのNICEDへの出張を中止せざるを得なくなり、当初予定していたコレラ菌の流行株の分離培養や分子疫学実験が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、コレラのホットスポットを中心に、各地域医療機関から糞便試料等(感染者及び無症候性保菌者からの採取)を収集するほか、河川や生活用水から検査試料を採取し、コレラ菌の臨床株、環境株を分離培養する。単離したコレラ菌のゲノム解析を実施し、各菌株が保有する定着因子の検出と株間での配列比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、コロナ禍によりインドのNICEDへの海外出張を中止せざるを得なくなり、当初予定していたコレラ菌の流行株の分離培養や分子疫学実験が実施できなかったため。令和4年度は、NICEDへの出張、分離培養したコレラ菌の臨床・環境株のゲノム解析を実施する予定であり、繰り越した経費はこれらに充てる予定である。
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