研究課題
急性下痢性疾患の死者数は世界で年間250万人にも上り、その多くは5歳未満の乳幼児である。近年、多くの国では上下水道の整備のため下痢による死亡者数は減少しているものの、その罹患率は依然として高く、インドなどの途上国では年間60万人が亡くなっている。特にコレラに関してはこれまでいくつかのワクチンが開発されてきたが、いずれも十分な予防効果が得られず、近年では薬剤耐性が深刻な問題となり、ワクチンや抗生剤に替わる新たなコレラ対策が求められている。コレラ最大の発生地であるインドにおいて、コレラ菌の流行株のゲノムを明らかとすることはその一歩となる。しかしながら、現地の方から回収した便には、コレラ菌の遺伝子は確認されるものの、絶対量が少なく、ゲノム解析が困難であるケースが多くあった。インドにおける腸管病原体の効率的なゲノム解析手法を開発し、不顕性感染者便や環境試料中の単離できない腸管病原体のゲノム情報を高感度で取得することができれば、コレラ菌を含む腸管病原体の包括的なメタゲノム解析を通して、インド国内における現在の下痢性疾患の流行状況と保有する病原因子・腸管付着因子を調査し、腸管感染症制圧に向けた基本情報を得ることが可能となる。令和5年度は、コレラ菌の流行株であるEl Tor株のゲノム配列をもとにして、DNAプローブ(Sureselect)の設計開発をおこなった。このDNAプローブは、コレラゲノムを微量しか含まないサンプルから作成したDNAライブラリに用いることで、特異的にコレラゲノムをハイブリダイゼーションし回収効率を向上させることができる。プローブ合成はTwist Bioscience社が実施した。
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