研究課題/領域番号 |
20KK0188
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鈴木 喜晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30596565)
|
研究分担者 |
デベガ スサーナ 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (30623590) [辞退]
大川 龍之介 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50420203)
土肥 透 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (60830536)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
キーワード | 髄鞘 / 軸索 / オリゴデンドロサイト / ニューロン |
研究実績の概要 |
髄鞘には二つの主要な機能が有り、一つは神経活動電位の跳躍伝導、もう一つは軸索の恒常性維持である。インターノード領域において、髄鞘側にはモノカルボン酸輸送体1(MCT1)が、軸索側にはMCT2が発現しており、オリゴデンドロサイト(OL)から軸索へATP産生のためのモノカルボン酸(乳酸、ピルビン酸)が供給される。髄鞘関連疾患ではこの機構が破綻することで共通して、軸索変性が誘発され、最終的には軸索消失が起こることで不可逆的且つ重篤な神経症状を呈する。更に髄鞘関連疾患では小径軸索が優位にこれらの影響を受けることが知られている。本研究では、小径軸索優位に髄鞘形成不全が見られ、野生型とほぼ同じ寿命であるteneurin-4(Ten-4)欠損マウスを用いて、無髄小径軸索の変性・消失のメカニズム解明やマーカー同定を試みている。これまでの研究結果としては、当初の予想と異なり、Ten-4欠損マウスでは、変性マーカー分子の発現上昇やミクログリアやアストロサイトの二次的反応は見られるものの、スフェロイド形成等の変性末期の形態異常は観察されず、更に無髄小径軸索は生涯を通じて消失せずに生存していることが明らかとなっており、無髄小径軸索のサバイバルファクターが存在していると仮説を立て、その発現分子の同定を試みた。網羅的タンパク質発現解析やパスウェイ解析の結果、14-3-3が候補に上がり、Ten-4欠損マウスの無髄小径軸索において14-3-3の明らかな発現上昇が見られた。現在阻害分子や活性化分子を用いた解析により、14-3-3が責任分子であるか検証中である。これらの発表可能なデータをまとめて、第66回日本神経化学会、第46回日本分子生物学会、第8回日本ミエリン研究会発表会にて報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載したように、これまでの研究展開としては、髄鞘関連疾患とは異なり、Ten-4欠損マウスの無髄小径軸索は消失には至らないことが分かり、予想外ではあったが大変興味深い展開となっている。我々はその無髄小径軸索のサバイバルファクターの同定を試みて候補分子を同定し、当該年度はその機能解析を進めるところまで到達した。だが、当初の計画とは異なる展開となったことと、新型コロナウイルス問題による様々な制限によって、当初の計画と比べると遅れを取っている。これらの問題によって、国際共同研究先のドイツのSimonsの研究室での実験は遅れを余儀なくされたが、方針が固まり、最終年度を延長することで2024年度に出向実験や人的交流を行う計画が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要と現在までの進捗状況に記載した通り、最終年度を延長し、今後は動物モデルと細胞培養系における無髄小径軸索のサバイバルファクター候補分子の阻害分子や活性化分子を用いた機能解析を進めていく予定である。阻害分子の投与系の準備には、国際共同研究先のドイツのSimonsの研究室での実験が必要で、2024年度中に遂行する計画である。更に研究代表者の研究室の若手研究者も参画することで、若手研究者の育成にも力を入れ、期間内での完了を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
上述したように、研究結果の予想外の展開や新型コロナウイルス問題の影響で、特に海外共同研究者であるSimonsの研究室での実験を計画通りに進めることができなかったことが影響している。当該年度中に研究が進捗し、更にSimonsの研究室での具体的な実験計画も立てることができたことから、最終年度を延長して費用を次年度に繰越すことで、必要な渡航費や先方での実験に計画的にあてがう予定である。その他、国内での必要な実験等にもあてがい期間内での目標達成を目指す。
|