研究課題/領域番号 |
20KK0192
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (30346267)
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研究分担者 |
荻野 千秋 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00313693)
赤坂 浩亮 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (20707161)
西村 勇哉 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 客員准教授 (40728218)
中山 雅央 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (60582004)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 無機ナノ粒子 / 放射線増感 / 表面修飾技術 |
研究実績の概要 |
我々は、放射線照射と併用で大量の活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)を産生し放射線増感作用を著明に増加させることが可能な過酸化チタンナノ粒子を開発することに成功し(特願2012-500638 放射線治療剤、Patent WO. 2011-08-25 US 8, 580, 312, B2:RADIATION THERAPY AGENT)、世界的にも先駆的な立場で放射線増感療法を開発中である。この技術を臨床に応用するには、過酸化チタンナノ粒子が無機ナノ粒子であるための毒性を低減するための表面修飾加工技術が不可欠である。メルボルン大学のFrank Caruso教授らは、無機ナノ粒子と有機分子をコーティングする独自技術「MPN: Metal-phenolic networks」を有しており、これら2つの先端的な技術の融合は、革新的ながん治療の開発に繋がることが期待される。日本・オーストラリアを基軸とした画期的な放射線増感剤の開発に取り組む。無機ナノ粒子と有機分子をより効率的に結合させ、無機ナノ粒子の毒性を低減させるためには、「MPN: Metal-phenolic networks」というさまざまなナノ粒子をコーティングする独自の技術が最適と考えられ、その技術を有しているメルボルン大学(オーストラリア)のFrank Caruso教授が世界的な権威である。この技術は、ベンゼン環を有するタンニン酸と金属イオンとを化学反応させ、ベンゼン環のOHを金属イオンに置換することで、3次元的にベンゼン環と金属イオンのシートを合成するものであり、メルボルン大学独自の手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的を達成するための研究方法として以下の4項目を提案したが、① 放射線増感効果が最大となる過酸化チタンナノ粒子の粒径の決定と、その他の材料となる金属ナノ粒子の探索 に関しては、20nm-100nmの様々な大きさの過酸化チタンナノ粒子のライブラリーを有し、現時点ではROSの発生量に関しては大きな差異はないと考えている。②無機ナノ粒子の表面をコーティングする至適MPN調整の検討では、未着手である。③ナノ粒子表面へのMPN修飾の検討に関しては、乳がん由来のヒト培養細胞と、がん細胞の表面抗原を標的化した抗体を用いてMPN法を用いた過酸化チタンナノ粒子のがん細胞内への効率的な取り込みを確認してきた。つまり、MPN法を用いた無機ナノ粒子と有機分子の結合によって、無機ナノ粒子の選択的取り込みを確認してきた。④ナノ粒子の腫瘍集積能と放射線増感効果の評価に関しては、ヒト膵がんXenograftなどの動物実験系にて、背部に腫瘍が発育した状態の担がんマウスに対して、ナノ粒子を局注し、放射線照射を実施する。腫瘍径の推移を50日間、動物用CTやMRIを用いて評価する。CT撮影、MRI撮影、PET撮影にて、腫瘍へのナノ粒子の集積性を評価し、ナノ粒子の集積性を評価する。これらの予備実験は既に完了しており、実験手技や結果の考察方法を既に確立しており、MPN法を用いた過酸化チタンナノ粒子の目的物質が確定すれば、In vivoでの効果実証実験を実施できる体制にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、研究代表者、および研究分担者が、オーストラリアに渡り、メルボルン大学の研究者と共に共同実験によって得られた有機・無機複合物質の有効性と安全性を確認することであるが、本年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、Webやメールを用いた情報交換やそれぞれにおける個別の検討に留まった。新型コロナウイルス感染症の今後の動向を注視していく必要があるが、次年度の後半に研究代表者、あるいは研究分担者がオーストラリアに移動し、共同実験を進めることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の対する施設内ルールに従い、施設利用や研究活動に一部制約があり、研究活動が出来ていない部分があった。
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