研究実績の概要 |
世界的に深刻な社会問題である「自殺」には強い遺伝要因が存在するとされる。しかしながら、自殺者試料の収集が極めて困難なことから、他の精神科領域の表現型に比して、自殺の遺伝学的知見の獲得は遅れていた。申請者らは、世界最大規模の自殺者DNA試料とそれら大半のゲノムワイド関連解析(genome-wide association study; GWAS)データを有し、世界で初めて「自殺完遂」のポリジェニック効果を報告した。本申請では、白人自殺GWASを世界で初めて施行するなど自殺研究の世界的中核機関であるコロンビア大学精神科Mannらと連携し、世界初の「国際自殺遺伝学コンソーシアム(以下、ISGC)」の立ち上げ・拡張を実施した。申請者らは、ISGCにアジア最大の自殺者GWASデータを提供し、さらにISGCと退役軍人プログラム(Million Veteran Program; MVP)との連携により、過去最大の43,871例の人種横断的な自殺行動者GWASを実施した。top hitのchr7のrs62474683をはじめ、SLC6A9, NLGN1, DRD2, SOX5, HS6ST3, FURIN関連のSNPがゲノムワイド有意水準を超えて同定された。また自殺行動と様々な精神科領域関連のヒト表現型との遺伝的相関を示した。白人とアジア人という異なる二つの人種の自殺GWASのロウデータセットを用いて、自殺GWASにおけるうつ病/統合失調症のポリジェニックリスクスコア解析を人種ごとに比較解析することで、白人に比してアジア人では、自殺とうつ病/統合失調症との遺伝的関連が弱い可能性を見出した。
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