研究課題/領域番号 |
20KK0197
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研究機関 | 公益財団法人結核予防会 結核研究所 |
研究代表者 |
土方 美奈子 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部, 部長 (90332387)
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研究分担者 |
慶長 直人 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 副所長, 副所長 (80332386)
瀬戸 真太郎 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部 免疫科, 科長 (50383203)
引地 遥香 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部, 研究員 (20829105)
郭 姿君 (GuoTzーChun) 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部 病理科, 研究員 (00813065)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 潜在性結核感染症 / エピジェネティック修飾 / 自然免疫記憶 |
研究実績の概要 |
ヒトが病原微生物の感染を受けた時、初期段階の抗原非特異的な宿主防御反応機構として自然免疫が働く。近年、感染やワクチン接種で誘導される免疫関連遺伝子群のエピジェネティック修飾により、次の異なる微生物の感染時に非特異的な自然免疫反応が増強するとされる「自然免疫記憶」が提唱されている。本研究は潜在性結核感染症(LTBI)に着目し、ベトナムの共同研究者と進めてきているハノイ市医療従事者のコホート研究(これまでの参加者数498名)を発展させ、LTBIの末梢血単核球で自然免疫に関わるエピジェネティック修飾が長期にわたり誘導されているかを明らかにすることを目的とする。ハノイ肺病院の医療従事者から血液の提供を受け、インターフェロンγ遊離試験(IGRA検査)に加えて新たにエピジェネティック修飾解析を行うため、リモート会議を活用し、現地研究者と協議を行なった。新型コロナウイルスパンデミックの早期には、自然免疫に関わるエピジェネティック修飾は新型コロナウイルスの感染抑制、あるいは重症化抑制に働くという仮説が多く発表されたが、最近は、LTBIにおいては新型コロナウイルス感染が結核再活性化を促進するという考えも多く発表されていることを踏まえ、研究参加者からインタビューで得るBCG接種歴、医療現場での職歴、最近の感染症の病歴に加え、本研究期間内の研究参加者のフォローアップ体制についてさらに検討を行うことが必要であると考えられた。また、IGRA検査と同時にエピジェネティック修飾解析用の末梢血単核球/CD14陽性単球の分離と凍結保存、新型コロナウイルス抗体等測定のための血漿分離をハノイ肺病院で行うための方法について、打ち合わせをさらに行うこととなった。日本側では、エピジェネティック修飾解析の解析方法の検討を行う準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、COVID-19のために、ベトナムの厳格な検疫、入国規制を受け、訪問が実質上不可能となった。リモート会議を活用し、現地研究者と協議を行なったが、実際に試薬消耗品等を持参して現地スタッフと具体的な操作手順の打ち合わせと技術移転を行い、検体採取方法~解析方法等も含めた研究プロトコールを確定させることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
IGRA検査と同時にエピジェネティック修飾解析用の末梢血単核球/CD14陽性単球の分離と凍結保存、新型コロナウイルス抗体等測定のための血漿分離をハノイ肺病院で行うための方法について、さらに打ち合わせを現地研究者と行い、必要な試薬消耗品等や主要な物品の準備を行う。日越の新型コロナウイルス感染状況により、入出国管理上、問題がなければ、実際に、日本側研究者がハノイへ渡航し、技術移転を行い、研究プロトコールを確定する。 日本側では、少量の臨床検体サンプルからオープンクロマチン領域を網羅的に解析するATAC-seqのライブラリー作成と次世代シークエンサーを用いたシークエンスの最適な解析フローを決定する。また、これまでの共同研究で収集されたハノイ市医療従事者の既提供血液試料(-80度保存)を用いた自然免疫関連遺伝子のゲノムDNAのメチル化状態の解析方法の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、COVID-19のために、ベトナムの厳格な検疫、入国規制を受け、訪問が実質上不可能となったため、旅費の使用ができなかった。次年度、日本国内で行うエピジェネティック解析の最適な方法を決定するための予備検討と、日本国内に保存されている、これまでの共同研究で収集されたハノイ市医療従事者の既提供血液試料(-80度保存)を用いた自然免疫関連遺伝子のゲノムDNAのメチル化状態の解析方法の検討に用いる。
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