前年度までに不動化では骨格筋で炎症が生じることを明らかとした。その際に骨格筋の炎症制御に関わる因子の候補としてケモカインCXCL10を同定した。CXCL10は不動化処理を行ったマウスの骨格筋で発現が増強するとともに、運動負荷を行ったマウスの骨格筋では発現が低下した。また、骨折により肢のギプス固定を行った患者の骨格筋生検試料においてもCXCL10の発現増強を確認した。加えて、マウスにCXCL10の中和抗体を投与すると不動化による骨格筋の炎症や筋量減少も抑制されたることも明らかとし、CXCL10は不動化による骨格筋の炎症とそれにと伴う筋萎縮の重要な制御因子と考えられた。 不動化で骨格筋に炎症が起こるメカニズムを探索するため、ギプス固定を行ったマウスの全身の変化を検討した結果、脳内の複数の部位でTNFαやIL1βなどの炎症関連遺伝子の発現が増強し、脳内炎症が生じることが明らかとなった。Lipopolysaccharide(LPS)を脳室内に投与することによって作成した脳内炎症モデルでは、骨格筋でKLF15を始めとした炎症関連遺伝子やある種のケモカインの発現が増強することも明らかとなり、LPSの脳室内連続的投与により骨格筋量の減少を認めた。 以上から、不動化による骨格筋の炎症やそれに伴う筋の萎縮には脳内炎症が関与する可能性が示された。また、脳内炎症によって生じる骨格筋萎縮の分子機構についても解析し、KLF15やその上流の因子の関与が示された。
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