研究課題/領域番号 |
20KK0200
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
小山 恭平 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00818479)
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研究分担者 |
紙谷 寛之 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30436836)
若林 尚宏 旭川医科大学, 医学部, 助教 (20827745) [辞退]
菊池 悠太 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80882711)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 小口径人工血管 / 自己再生 / 生体吸収性素材 / エレクトロスピニング / 血管グラフト |
研究実績の概要 |
冠動脈バイパス術や下肢動脈バイパス術のような細径血管の再建術では、現在のところ臨床の使用に耐えうる人工血管が存在しないため、治療には自家血管(患者本人から採取した血管)を使わざるを得ない。自家血管の採取による患者負担を軽減し、より安定した治療を提供するためには、実用可能な細径人工血管の創出が必須である。本研究では、患者の組織と一体化し自家血管の様に再生や成長する能力を持つ、生体分解性の細径人工血管を創出する。 2021年度までに、ラットの腹部下行大への人工血管移植モデルを用いて、ポリカプロラクトン(PCL)製の人工血管(PCLグラフト)が長期に開存し自家血管様に再生することを示した。また、血小板などの吸着を抑制するための親水性コーティングの方法を開発や、PCLグラフトが糖尿病モデルでの機能評価を行い、小動物モデルでの有用性を示してきた。2022年度は、実用性の評価を行うために、中大動物でのグラフト評価モデルの作成を行った。まず、ブタ冠動脈バイパスモデルを作成するために、内胸動脈を用いて冠動脈バイパス術を行った。術後1週間までの観察で、ブタの健康状態もよくグラフの開存が得られ、手術モデルの実効性を確認した。その後、内径3mmのPCLグラフトを作成し実験を行ったが、数時間以内に血栓閉塞してしまい、短期開存すら得られずグラフトの抗血栓性を向上させる必要があると考えられた。並行して、内径3mmのPCLグラフトを長期的な変化を観察するモデルとして、ウサギの腹部下行大動脈を用いた移植モデルの確立を目指した。ウサギは虚血に対して非常に弱くモデル作成に難航したが、3週間以上開存が得られるモデルを確立することが出来た。2023年度は、PCLグラフトの抗血栓性を向上させる方法の開発を行い、中大動物での機能評価を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットの移植モデルでは、PCLグラフトの開存が得られていたが、ブタやウサギのモデルでは開存を得るのが難しく、モデル自体が原因かそれともPCLグラフトの機能性が動物種で異なるのかが明らかではなく、評価系を作成するのに時間がかかった。ウサギの移植モデルが確立したため、このモデルを優先的に使い内径3mmのグラフト機能評価を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に確立したウサギの移植モデルを中心に、内径3mmのPCLグラフトの機能評価を進める。また、長期的に内膜肥厚が起こるかどうか、PCLが分解し完全な自家血管化が得られるかどうかを評価する。 PCLに他の素材を組み合わせ分解性や生体適合性を最適化したナノファイバーを作成する計画は、リオグランデ・ド・スル大学(UFRGS)で行う予定であったが、新型コロナの感染状況を鑑みて渡航を保留していた。2023年度は、FRGSに渡航し計画している実験を遂行する予定である。行う予定の動物実験系は、2022年度に旭川医科大学で確立してあるため、渡航後すぐに実験が開始できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染状況からリオグランデ・ド・スル大学への渡航を保留していたが、状況が改善してきたため2023年度に渡航し研究を行うための費用を繰り越した。
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