研究課題
これまでの結果からプラスミン活性が石灰化の出現に重要であることから、PAI-1(plasminogen activator inhibitor-1)はその名の通りtPAを阻害してプラスミン活性を低下させるが、PAI-1inhibitor含有の食餌をこれらのマウスに投与しても石灰化は予防できなかった。つまり石灰化に寄与するplasminogen activatorが主にtPAでなくuPAであることが示唆され、これは昨年行った実験でtPAよりもuPA KOマウスにて石灰化が惹起された結果と一致する。石灰化の消退についてもtPAノックアウトマウスでは正常だったがuPAノックアウトマウスでは遅延したことからuPAによるプラスミン活性が重要と考えられた。プラスミン活性の主な働きはフィブリン溶解であることから石灰化もフィブリンを介した働きと考え、フィブリノーゲンの変異マウス(フィブリノーゲンからフィブリンが形成されない)とプラスミノーゲン欠損マウスを交配し石灰化の出現を観察した。するとフィブリノーゲンの変位の有無で石灰化出現は変わらなかった。つまりプラスミン活性が石灰化に関与するのは線溶系を介してではないことが判明した。プラスミノーゲン部分KOマウスにおいてカルディオトキシンを下腿三頭筋に注射することで惹起された異所性石灰化を収集し解析した。下腿三頭筋を摘出し、超音波ホモジナイザーで十分に破砕した後、石灰化の比重が大きいことを利用して高濃度スクロース溶液を添加して延伸することで石灰化を組織から単離した。XRDなどで分析すると、石灰化はリン酸カルシウム結晶から成り立っていることが判明した。現在この成分を詳細に分析中である。
2: おおむね順調に進展している
石灰化の出現、石灰化の消退、石灰化から骨化への移行という一連の流れが明らかになってきた。線溶系協力関係にあるVanderbilt大学については本学整形外科より2021年より川畑が、2022年より小柳津が出向し2人体制で研究に従事している。また吉井と、2021年にVanderbilt大学留学から帰国した江川は2022年度にVanderbilt大学を訪問しdiscussionを交わした。
aリン酸カルシウムには多くの種類があるが、例えばハイドロキシアパタイトの局所投与は骨化を惹起しないことから異所性石灰化はその他のリン酸カルシウムの成分からなり立っていると考えられる。この同定ができれば逆に骨形成薬の創出につながると考え、分析を続けていく。また凝固線溶系と石灰化との関係については、プラスミンの線溶系以外の働きに着目して解析を続けていく。協力関係としてVanderbilt大学には2023年からは歌川が出向しており、今後も常時2大学の協力体制で研究を継続している。
新型コロナウイルスの感染再拡大に伴う、社会的隔離措置(ロックダウン)政策が実施された影響により、当初計画していた研究用試薬・消耗品等のうち、入手出来なくなったものがあり、次年度使用額が生じた。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (14件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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