研究課題/領域番号 |
20KK0209
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平石 典子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (20567747)
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研究分担者 |
林 文晶 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (00450411)
土山 奈美 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 医員 (40803193)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 固体NMR / X線回折 / バイオガラス / 固溶体 / フッ化物 / ストロンチウム / 象牙質 / エナメル質 |
研究実績の概要 |
国内で開発された、フルオロボロアルミノシリケートガラス系ベースのS-PRG (surface pre-reacted glass ionomer)フィラーを使用した実験では、フ ッ素、ホウ酸、ストロンチウムイオンリリースの再石灰化への影響を、X線回折(XRD)・Rietveld refinement法と、固体核磁気共鳴(SS-NMR)を用いて詳しい評価を行った。フ ッ素、ホウ酸、ストロンチウムイオンは、Caイオン、リン酸イオンと反応し、アパタイト結晶に取り入れられる挙動を、固体NMR分析、XRD解析を行い、粉末回折パターンから結晶構造を推定するRietveld解析を行った。 HPO42-とCa2+を含む過飽和緩衝液からナノサイズハイドロキシアパタイト(H-Ap)を生成し、 固溶体法として、4種類の添加物(フ ッ素、ホウ酸、ストロンチウムイオン、S-PRG filler抽出液を使用した。結果、2D 1H-31P heteronuclear-correlation (HETCOR) NMRは、フッ化物添加時、HETCORの1H軸への投影はアパタイト構造へのF-取り込みを示した。各固溶体の31P軸上のピークはH-Apとは異なり、半値幅が大きくなった。FとBO3イオンが組み込まれていることは、19FNMRと11B NMRでさらに確認された。XRDでは、Sr2+の取り込みは軸長の増加によって示され、Sr2+はCaIIサイトに優先的に取り込まれていることがわかった。S-PRGフィラー溶出液中のF-、Sr2+、BO33-は、カルシウムと反応させ リン酸イオンがハイドロキシアパタイトの結晶格子に取り込まれていることがわかった。S-PRGフィラーのイオンは、アパタイト析出の結晶化を変化させ、様々なアパタイトを生成することに関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染拡大防止の海外渡航制限の為、実際に英国へ赴き、予備実験実施には至っていない点が、現在までの進捗状況がやや遅れている要因である。しかしながら、2023年3月に英国ロンドン大学からポスドク研究者が来日し、今後の研究方針の確認を行った。新しい知見として、バイオガラスに、従来のポリアクリル酸ではなく、生体親和性のあるポリガンマグルタミン酸の使用を検討することで、分解性がありながら細胞毒性がない新しいガラス製剤を開発する目的である。Robert Hill教授らの研究チームに、8種類の生体活性ガラスの提供を受けた、High Phosphate Fluorine Containing Glass、Low Sodium Fluorine Containing Bioactive glass、45S5 with CaO replaced by SrO、Multicomponent mixed Ca/Sr Bioglassの、生体親和性の評価を実験中である。各材料の予備実験として、各種イオンリリースを、ICP発光分光、フッ化物イオン電極にて測定し、これら生体活性ガラスの再石灰化誘導を、髄幹細胞(hDPSCs, human dental pulp stem cells)用いて、細胞への影響を評価を実施している。歯髄幹細胞培養では、歯髄幹細胞を3次元で培養し象牙芽細胞へと分化させる手法で、各バイオグラスの効果を評価するよう予備準備を進めた。細胞培養の多くは平面的な培養だが、生体内の組織は3次元的であり、歯髄組織への親和性評価を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
海外の研究機関等での研究が大きなウエートと占めており、本年度、コロナ感染予防規制が緩和されたため、3月ごろロンドン大学歯学部歯科材料学Robert Hill教授訪問予定である。生体親和性のあるポリガンマグルタミン酸の使用に関し、バイオガラスにの基剤として有効であるとの見地があり、共同研究の予定である。ハイドロキシアパタイトに結合し、酸性条件下でその溶解を阻害する唾液ペプチド、Statherinに模倣した機能が期待されている。Statherinはリン酸化されたセリン残基を介してハイドロキシアパタイトに結合すると考えられていたが、結合領域には多くのグルタミン酸残基も持っているため、ポリガンマグルタミン酸に注目している。ポリガンマグルタミン酸は、日本の伝統食「納豆」のネバ(糸引き)の主成分であり、多数のマイナスイオンを持っているため、カルシウムをはじめとしたミネラルの吸収促進効果があることが報告されている。ポリガンマグルタミン酸とハイドロキシアパタイトの結合に関する研究は有用であり、特に固体13C NMRを使用することを計画中である。 また、国内のバイオガラスに関しても、追加実験を予定している。亜鉛リリース型のバイオガラス配合グラスアイオノマーについて、新鮮ヒト抜去歯を用い、内在性のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)の活性抑制効果を実験中である。MMPsの活性化には亜鉛イオンが必要であり、これらの酵素の活性部位内で亜鉛イオンが配位されるが、過剰な亜鉛により、活性が抑制されると言われている。in situザイモグラフィーを予定し、生体組織内(新鮮象牙質)でMMPsの活性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、やはり国内の新型コロナ ウイルス感染予防対策で、渡航が積極的に出来なかったのが、共同研究の遅延の理由である。本課題では、フッ素の効果関連の分析解析技術として、19F- NMR分析は、原子レベルでの、化学理的性状分析を行う上で、固体NMRによる解析は、理化学研究所NMR研究開発部門(NMR応用利用グループNMR先端応用外部共用チーム)の共同研究者に、技術的サポートを得ていた。2022年度より、組織再編成で19F- NMR分析の機器が使用できない状況が続いている。外部施設(早稲田大学物性計測センターラボ)または、ブルカージャパン株式会社で測定依頼が可能か検討中である。ブルカージャパン株式会社では、デモラボの400 MHzで協力頂けるが、依頼予定である。理化学研究所NMR研究開発部では、これまで同様、31P- NMR分析は可能とのことで、ミネラルの性状分析を続行する。
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