研究課題/領域番号 |
20KK0210
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川端 重忠 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (50273694)
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研究分担者 |
山口 雅也 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (00714536)
広瀬 雄二郎 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (90788407)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 口腔細菌叢 / メタゲノム解析 / 細菌シングルセル解析 / 唾液 / 早期小児う蝕 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、タイにおける健常および重度の早期小児う蝕の小児の口腔微生物叢について解析を行い、微生物叢全体の遺伝子解析に加えて個別の菌体のゲノム配列の決定を試みる。得られたゲノム情報から、薬剤耐性遺伝子の分布、ならびに培養不能菌の代謝経路の決定を行う。さらに、早期小児う蝕と相関を示す微生物叢中の菌種または遺伝子の検出を試みるものである。 タイにおいて全身状態が健常な小児集団を選出することとした。同意が得られた被験者全員から微生物叢検体として、唾液と歯面プラークを収集し、54検体を得た。重度ECCの解析については、更に検体数を追加した上で、得られた群より、口腔内状況に基づき、カリエスフリーな集団と重度ECCの集団をさらに選出し、比較を行う予定である。 得られた各検体について、16S rRNAを解析対象とした細菌叢解析を行った。全体として、Streptococcus属、Prevotella属、Veillonella属、Actinomyces属などの比率が高いことが示された。一方で、興味深いことに、小児検体であるにも関わらず、Porphyromonas属やFusobacterium属も一定の割合で検出された。さらに、細菌叢中の遺伝子を同定するため、微量遺伝子の増幅を行った上でメタゲノムショットガン解析を実施した。薬剤耐性遺伝子については、遺伝子マッピングプログラムと耐性遺伝子データベースを利用して検索するパイプラインを確立した。メタゲノムショットガン解析で得られたシーケンスデータについては、今後ゲノム配列の再構築と遺伝子配列のアノテーションを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、新型コロナ感染症の問題により、倫理審査は通過したが検体の採取が許可されない状況であった。今年度は状況が改善し、検体採取が可能となった。2023年度まで計画を延長し、継続して解析を実施する。総合的に判断し、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の状況が落ち着いているため、タイにおいて継続して検体の採取を行う。当初の計画に沿って、同意が得られた被験者全員から微生物叢検体として、唾液と歯面プラークを収集する。重度ECCの解析については、得られた群より、口腔内状況に基づき、カリエスフリーな集団と重度ECCの集団をさらに選出し、比較を行う。 得られた各検体について、16S rRNAを用いた細菌叢解析に加え、メタゲノムショットガン解析によって細菌叢中の遺伝子を同定する。薬剤耐性遺伝子については、遺伝子マッピングプログラムと耐性遺伝子データベースを利用して検索する。メタゲノム解析の結果から、患者および対照群の典型例について、シングルセルゲノム解析を行う。 微生物叢のパンゲノム解析ならびにコアゲノム解析を行い、得られたSNPおよび各遺伝子について、MWASの解析プログラムや次元削減法を用いて、う蝕発症または抑制と相関する菌種、遺伝子の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症により、計画当初にタイでの検体採取が許可されなかったため、予定よりも収集した検体数が少なくなり、解析に要する金額が低くなったので次年度使用額が生じた。次年度は検体を収集し、各種の次世代シーケンス解析と情報解析を行うのに必要な予算を使用する。また、得られた成果を発表するため、英文校正費、論文投稿費またはオープンアクセス費を支払う。
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