研究課題/領域番号 |
20KK0212
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西村 英紀 九州大学, 歯学研究院, 教授 (80208222)
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研究分担者 |
新城 尊徳 九州大学, 歯学研究院, 助教 (20711394)
横溝 久 九州大学, 大学病院, 助教 (60866747)
小川 佳宏 九州大学, 医学研究院, 教授 (70291424)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 糖尿病関連歯周炎 / メタボロミクス / プロテオミクス / RNA-sequence / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
本国際共同研究採択直後よりCOVID-19のパンデミックが始まり、世界的大流行となったが、とりわけ米国における感染状況が深刻であったため、海外協力施設(Joslin Diabetes Center: JDC)においては重症化リスクの高い2型糖尿病患者のリクルートが当面困難であるとの見通しとなった。昨年度初旬より海外共同研究先のco-PIであるGeorge King博士とのオンライン会議を数か月にわたって持ち、感染状況の推移を見ながら、九州大学(日本人)における歯肉検体採取を先行し、JDCへ送付して各種オミクス解析を行っていく方向とした。これに付随し、日本人検体の中で糖尿病・非糖尿病者のうち、歯周炎なしまたは軽度歯肉炎と、重度歯周炎の被検者をリクルートし、歯肉検体を採取していくこととなった。一方で、COVID-19の度重なる変異株の出現と繰り返すパンデミックのために、九州大学においてもたびたび研究活動を制限せざるを得ず、九州大学病院内のみでの被験者リクルートでは目標とする検体数の採取まで時間がかかりすぎる恐れが高かったため、新たに外部の総合病院に臨床共同研究を行うことで調整を行った。福岡県大川市にある医療社団法人高邦会・高木病院の歯科口腔外科および内分泌代謝・糖尿病内科部長と連携を取り、綿密なすり合わせを行ったのちに、最終的に2021年末に九州大学病院および高木病院双方より臨床研究実施の倫理承認を得ることができた。2022年度初旬より両病院で被検者のリクルートを開始するための準備が整い、被検者の募集を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19のパンデミックによる影響が予測以上に大きく、たびたび研究活動の自粛や制限、および検体採取に向けた戦略の見直しを迫られたため、検体の回収が遅れている状況である。現在は、九州大学病院歯周病科および高木病院歯科口腔外科において歯肉検体採取のための準備が整備され、加えてコロナワクチン接種の普及や様々な治療薬の登場により、重症化リスクのある患者のリクルートもしやすくなることが期待され、昨年度のような大きな研究活動の制限には見舞われずにスムーズに検体採取を行っていくことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
九州大学病院歯周病科、高木病院歯科口腔外科での検体採取を先行して行い、必要な検体数がそろった時点でJDCへ検体を送付し、速やかに統合オミクス解析(メタボロミクス、プロテオミクス、RNA-sequence)を実施し、糖尿病関連歯周炎の病態解明を行うとともに、治療介入標的として有用な因子の探索を現地・リモートでのディスカッションを頻回に行いながら推進する。治療標的としての可能性を持つ候補因子が選出できたのちに、日本国内の業者に遺伝子改変マウス作成を委託し、糖尿病関連歯周炎病態進行への影響を解析する。具体的には、候補因子を歯肉線維芽細胞あるいは歯肉上皮細胞など歯周組織内で最も発現する細胞特異的な過剰発現・ノックアウトを行ったマウスを作成し、高脂肪食負荷やストレプトゾトシン処理をして糖尿病を誘発した状態で実験的歯周炎を惹起し、歯槽骨吸収や歯肉中の遺伝子発現変動をはじめとした歯周炎病態の解析を行う。それとともに、臨床研究で回収した歯肉検体や血液検体を用いて、ヒトにおいて候補因子と糖尿病、歯周炎重症度、各種生化学的血液パラメータや歯周病関連パラメータとの関連、および血液、唾液中での候補因子の濃度測定を行うなどして糖尿病関連歯周炎との関係性についても検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰り返し発生した新型コロナパンデミックの影響により、患者のリクルートとサンプルの収集、海外共同研究先への渡航による打ち合わせや解析が困難であった。22年度に入り、海外渡航制限が緩和されつつあること、前年度日本側のサンプル収集に向け対象施設の拡充とすべての倫理面でのハードルをクリアしたことから、今年度以降サンプル回収と相手先でのデータ解析が可能となる見込みであり、当初目的に沿った形で予算消化を行う予定である。
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