研究課題/領域番号 |
20KK0230
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 克彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80344597)
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研究分担者 |
川西 範明 千葉工業大学, 先進工学部, 准教授 (00706533)
河村 拓史 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (80823327)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 運動 / エクソソーム / マイクロRNA |
研究実績の概要 |
細胞から分泌されるエクソソームとよばれる顆粒がさまざまな生理作用を有することが明らかにされた。本研究課題では、血液や骨格筋の培養液などからエクソソームを単離・回収し、細胞内代謝環境の変化や筋収縮の刺激に伴うエクソソームの量的・質的変動を明らかにし、運動に伴う骨格筋由来の生理活性因子による生体調節機構に新たな知見を得ることを目的としている。また、運動に伴うエクソソームの変動を検証し、運動やストレスを反映する新規バイオマーカーとしての妥当性を検討することを目的としている。 初年度には、マウスの血液および採取したマウス骨格筋組織の培養液からポリマー沈殿法によりエクソソームを含む細胞外小胞を精製して、大規模並列シーケンサーを用いたエクソソームが含有するメッセンジャーRNA(mRNA)やマイクロRNA(microRNA)の網羅的発現解析の解析手法の確立を行った。確立した解析法を活用して、マウス骨格筋に電気刺激による筋収縮を負荷した条件での血清エクソソームに含有するmicroRNAおよびmRNAの発現プロファイルの変動を検証した。その結果、電気刺激直後には7種類のmicroRNAの増加、電気刺激90分間後には17種類のmicroRNAの増加と5種類のmicroRNAの減少を観察した。特に、骨格筋に強く発現することが知られているmiR-1、miR-133、miR-206は電気刺激90分間後に10倍以上に増加することを見出した。また、mRNAは電気刺激直後には252種類の増加と205種類の減少、電気刺激90分間後には335種類の増加と218種類の減少を観察した。さらに、60分間の中強度持久的走行運動を負荷して、血清エクソソームに含有するmicroRNAの発現プロファイルの変動を検証して、運動直後に4種類のmicroRNAの増加と2種類のmicroRNAの減少、90分間後にmiR-122およびmiR-146など18種類のmicroRNAの増加を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍の影響で海外渡航ができなくなったが、サンプルを空輸し分析を進めることができた。一方、大規模並列シーケンサーを用いたエクソソームが含有する各種RNAの網羅的発現解析の解析手法の確立を実現することができた。さらに、筋収縮や持久的運動など様々な運動様式での血清エクソソームのmiRNAの変動を探索することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目には、電気刺激による筋収縮および持久的運動の負荷により分泌されるエクソソームの機能解析を行う。具体的には、安静マウスおよび電気刺激負荷マウス、持久的運動負荷マウスから精製した血清エクソソームを骨格筋細胞および脳神経細胞に添加して、細胞の増殖能と樹状突起形成やシナプス発達などの分化能の違いを検証する。加えて、安静マウスから精製したエクソソームに電気刺激や持久的運動で特異的に変動が認められたmicroRNAをトランスフェクションして、運動を模倣した改変エクソソームを作成する。改変エクソソームを骨格筋細胞および脳神経細胞に添加して、各種の細胞機能解析を行うことで運動効果を規定するエクソソーム含有型microRNAを同定する。さらに、ヒトを対象とした実験を行い、持久的運動後に採取した血液および尿からエクソソームを精製して、大規模並列シーケンサーを用いた各種RNAの網羅的発現解析を行い、運動ストレスを反映する新規バイオマーカーを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で実験や試薬の調達がうまくいかなかったところもあったが、次年度で挽回できる見込みである。
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